【スバ/フィジー 5日 AFP】2006年12月のクーデターから1か月後の5日、クーデターを指揮したバイニマラマ(VoreqeBainimarama)軍司令官が暫定首相に就任し、
実権を確実なものとした。

■「首相任命」はだだの茶番劇か

 バイニマラマ司令官は前日、軍部に近いジョセファ・イロイロ(Josefa Iloilo)大統領に権限を返還しており、そのイロイロ大統領から自身が首相任命を受けるかたちとなった。

 フィジーの政治制度では、大統領に政治上の実権はなく首相が全権を持つ。首相に就任したバイニマラマ司令官は、間もなく組閣を行うこととなる。

 しかし、ニュージーランド政府は、「軍部による政権奪取の危機を感じ取っていたガラセ前首相政権下では、クーデターは違法とされていた。バイニマラマ司令官の首相就任は、クーデターそのものを正当化するのが目的だ」との批判を表明した。

 ニュージーランドのウィンストン・ピーターズ(Winston Peters)外相も、バイニマラマ司令官の首相就任は、クーデターの正当化を目的とした「茶番劇」と糾弾し、「誰の目もごまかせない」と語った。

 また、離島に追放されたガラセ前首相はフィジーラジオに「現在のフィジーはほぼ軍事政権状態だ」と同司令官を批判する。「独裁的な政権が誕生し、しばらくは不安定な状況が続くだろう」とも述べている。

■就任式では、強気の発言に終始

 就任式で同司令官は「真に国民に忠実な首相」となると宣誓した。また、ライセニア・ガラセ(Laisenia Qarase)首相に対するクーデターについて、軍部は訴追されないと再度強調した。

 宣誓式の後、同司令官は軍司令部から国民に向けてメッセージを放送し、経済の向上、「構造的汚職」の追放、近隣諸国との関係改善を約束した。また、自身がフィジー国軍(the Republic of Fiji Military Forces、RFMF)のトップも兼任すると発表した。

 また、「どのような手段であれ、我々政権への対決をもくろんでいる者は、私を首相に任命した賢明な大統領に免じて、その考えを再考してもらいたい」と軍事政権への反対運動をけん制した。

 バイニマラマ司令官は「フィジーは今、新たな幕開けを迎えた」とメッセージを締めくくり、回りの将校らの喝采を浴びた。

 総選挙の実施時期については具体的な日程は示されず、「政情および経済状況がふわさしい時期」との前日のイロイロ大統領の言葉を繰り返すにとどまった。

 同司令官らによる12月5日の無血クーデター以後、フィジーは平静を取り戻している。しかし、クーデターに抗議した人々は、警告のため軍司令部に拘束されているという。民主活動グループ6団体に所属する活動家らは、兵士に兵舎に連行され暴行を受けたと語っている。フィジーでは、過去20年間で4度もクーデターが起きている。

 写真はスバで5日、首相就任式に臨むバイニマラマ司令官(3列目中央)。(c)AFP/FIJI TIMES