【ソウル/韓国 27日 AFP】南北朝鮮で50年以上離ればなれになっていた大勢の離散家族が27日、テレビ映像を通じて再会を果たした。

■再開された再会事業

 北朝鮮の非核化宣言がなされたことをきっかけに冷え切っていた両国の関係が改善されつつある中、南北政府は離散家族の再会事業の再開に合意。1950年から1953年の朝鮮戦争時代に南北間で離ればなれになった865人120家族が、テレビ映像を通じた再会を許可された。

 韓国赤十字(South’s Red Cross)によると、今回のテレビ面会は27日から29日まで行われ、離散家族らは2時間の個別面会を行う。この面会用の特別スタジオが、北朝鮮の首都平壌(Pyongyang)に1か所、ソウルを含めた韓国主要9都市に12か所、計13か所設置されている。テレビ面会が再開されるのは13か月ぶり。

■年老いた離散家族

 平壌にあるホテルの一室にいる自分の家族が映し出された映像を見た韓国側の人々は、喜びを隠しきれない様子だった。

 北朝鮮人のJi-Hoさん(72)は、102歳になる韓国人の父親Choe Byeong-Okさんが映ったテレビに向かって深々とお辞儀をした。Byeong-Okさんは、家族に付き添われて韓国の首都ソウル(Seoul)南部にあるテレビスタジオまでやってきたという。

 Ji-Hoさんは涙を流しながらこう話した。「年老いて体も弱っていますが、あなたは私の父親に違いありません。あいさつをさせてください。北朝鮮にはあなたの子どもが3人います」

 これを聞いたByeong-Okさんは「悲しまないでほしい。お互いに残りの人生は楽しくすごそう。そして南北統合後に再会しよう」と語った。

 2人は涙と笑顔を浮かべながらあいさつを交わし、家族の写真を見せ、消息不明の他の親類の安否を尋ねた後、Ji-Hoさんの要望で南北の統合を願う歌を合唱した。

 ソウルにある韓国赤十字本部では、同様の光景が他にも多数見られたという。 

 北朝鮮人のChoeng Won-Yongさん(75)はテレビ映像の中で、韓国にいる妹に「(韓国の)故郷を離れて以来、毎日のように両親のことを思っていた」と語った。

 すると妹のCheong Seok-Yongさん(64)が「兄さんにずっと会いたいと思っていたので、昨夜はよく眠れなかった」というと、Won-Yongさんさんは「私もだ。ずっと会いたいと思っていた」と応えた。

■政治問題を超えた再会を 

 こうしたテレビを通じてのやり取りが、どの程度北朝鮮政府に監視されていたかは明らかにされていない。

 韓国赤十字は、テレビ再会する家族から同意を得られた場合、報道記者がこうしたやり取りの一部を見ることを許可した。

 離散家族の問題は、解決すべき緊急課題の1つとなっている。当事者らの高齢化が進む中、その多くが死ぬ前に一目愛する家族に会いたいと願っているからだ。

 高齢者にとって、長距を離移動して直接会いに行くのは困難なこと。韓国では、こうした高齢者を支援することを目的に、テレビを通じての再会事業が開始された。

 南北間では一般市民同士による郵便や電話でのやり取りができず、韓国では9万人以上が50年以上もの間、北朝鮮にいる家族と連絡がとれずにいる。

 Han Wan-Sang韓国赤十字社総裁は、北朝鮮の赤十字社中央委員会委員長とテレビ会議を開いた際、「1年間にわずか2、300人が再会を許可するだけでは、離散家族の苦しみを取り除くことはできない」と語りかけ、より多くの家族が再会を実現できるよう要請した。

 また、韓国の李在禎(イ・ジェジョン、Lee Jae-Joung)統一相は「家族の再会事業は、今後も定期的に行われるべきだ。政治的理由によって中断されてはならない」と指摘している。

■次回の面会は5月

 南北離散家族のテレビ面会は2005年8月に開始。以来、2006年2月までに279家族1876人が再会を果たした。また2000年の南北首脳会談以降、1万3000人以上の韓国人が北朝鮮にいる家族と直接再会を果たしている。

 次回のテレビ面会は北朝鮮のリゾート地、金剛山(Mount Kumgang)で5月9日から14日の日程で開かれる予定。

 写真はソウルにある韓国赤十字本部で27日、北朝鮮にいる姉のJung Sun-Okさん(75)とテレビ面会を行う韓国のJung Sam-Okさん(65、左)。(c)AFP/REPUBLIC OF KOREA