【7月4日 AFP】イスラマバード(Islamabad)で3日に発生したパキスタンの治安部隊と急進派「赤いモスク(Red Mosque)」の神学生らの衝突から一夜たった4日、包囲下にある同モスクから複数の女性と子どもが退去した。夜間外出禁止令が敷かれる中、一部の女性神学生の身柄が親類に引き渡された。政府当局が伝えた。

 国営テレビによると、女性神学生25人以上が同モスク付属の神学校から退去。またイスラマバード市当局によると、先刻少なくとも女性6人の退去が確認され、男子学生約250人も退去を求めているもよう。多くの学生が携帯電話で当局者と連絡済みだという。

 市当局は、同モスクの聖職者は女性神学生を「人間の盾」として使用していたため退去を阻止しており、女性らがそこにいなければ政府側はより早期に措置を取ることができただろうと明らかにした。

 パキスタン情報相は神学生の降伏期限を午前11時(0600GMT)に設定していた。

 3日の衝突では、少なくとも12人が死亡、150人以上が負傷した。学生らはイスラム原理主義勢力タリバン(Taliban)寄りとされ、治安部隊がこのモスク周辺に配置され、双方のにらみ合いが続いていた。

■両者間の緊張が高まった今年1月からの経過

1月:女子神学生らが、イスラマバードの政府所有地に違法に建てられた複数のモスクの取り壊し計画に抗議して国営児童図書館を占拠。

2月13日:政府、既に取り壊されたモスクの再建に合意。ムハンマド・イジャズル・ハク(Muhammad Ijaz-ul-Haq)宗教問題相も再建を約束。

3月:神学生ら、イスラマバードの市場と歓楽街のオーディオ店でタリバン風の「宗教警察」活動を開始。

3月27日:女子神学生、売春宿を経営していたと見られる女性3人を拉致。のちに警官2人を拉致。(タリバンが女性に強制する)ブルカを着用した人質の姿がメディアに公開され、「懺悔した」として全員解放される。

4月6日:赤いモスク、イスラム法に基づく「シャリア法廷」を設置。モスクの最高聖職者Abdul Aziz氏、「政府の弾圧には数千人の自爆テロで報復する」と発言。

4月9日:シャリア法廷、スカイダイビングのインストラクターと抱き合っている写真が公開されたニロファル・バカティアル(Nilofar Bakhtiar)観光相に対し、「ファトワ(宗教的布告)」を宣言。

4月10日:政府、赤いモスクの「違法」ウェブサイトとラジオ局の閉鎖を発表。

5月19日:神学生ら、警察がモスクの支持者10人以上を逮捕した後警官4人を拉致。21日、さらに警官2人を拉致。のちに全員を解放。

6月23日:神学生ら、売春を斡旋しているとして鍼灸(しんきゅう)院から中国人7人(女性6人と男性1人)を含む従業員9人を拉致。同日、全員を解放。

6月27日:中国政府、パキスタン国内の中国人労働者を保護するようパキスタン政府に要請。

7月3日:治安部隊と神学生がモスクで衝突、兵士1人、ジャーナリスト1人、神学生4人を含む12人が死亡。市民も巻き添えに。(c)AFP