【10月5日 AFP】パキスタンのペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領は、なぜ権力の座に執着するのか。大統領の理想の人物2人から、その理由を探ることができるかもしれない―その2人とはフランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)と、第37代米大統領リチャード・ニクソン(Richard Nixon)だ。

 自身を米国主導の「テロとの戦い」における最大の支持者と位置づけるムシャラフ大統領は、支持率の急低下にもかかわらず、再選を目指して大統領選に立候補している。

■自国の救世主を自任

 ムシャラフ大統領は、1999年10月12日の無血クーデターで政権を握って以来、ナポレオンの軍人らしい率直な物言いと、ニクソン元大統領の目指した現実的な政治を理想としてきた。

 また、自らを核保有国パキスタンの救世主と呼び、特に2001年の9.11同時多発テロ以後は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に対する砦を自任してきた。

 だが反ムシャラフ派は、民主主義の停滞や8年にもおよぶ軍政を背景に、大統領は独裁者が陥りがちなわなにはまっている、自らを必要不可欠な人物だと考えていると非難する。

 ある政治アナリストは「独裁者はいずれ自らを救世主とみなすようになる。自分がいなければ国は崩壊する、そうさせないために自分は役割を全うしなければならないのだと考えるようになる」と指摘し、大統領もその1人であることを示唆した。

 たしかにムシャラフ大統領は「世界一危険な職業」と呼ばれる大統領職に就きながら、何度も気骨のある姿を見せてきた。たとえば、これまでに少なくとも3回、アルカイダ・メンバーによって暗殺されかかっている。

■「指導者の要件は強運さ」

 大統領公式ウェブサイトで、同氏はこうした暗殺計画について次のように記している。「わたしは『強運の持ち主』だ。指導者として成功する上で最も重要な要素は強運さだ―ナポレオンはそう言っている。つまり、わたしは成功するということだ」

 大統領はほかにもいくつかのインタビューで、ナポレオンについて語っている。

 また、政権掌握時にもムシャラフ大統領は、軍人出身であることから他国の指導者にモデルを探すことを余儀なくされた。その結果、ニクソン元大統領の著書『指導者とは(Leaders)』を参考とするに至ったという。

 決断力があることで知られるムシャラフ大統領。その座右の銘は、ニクソン元大統領の言葉、「分析のし過ぎは思考の停滞につながる」だという。

 パキスタンの大統領任期は5年。投票は今月6日に予定されている。(c)AFP/Danny Kemp