【10月7日 AFP】スリランカ中部のミネリヤ(Minneriya)国立公園では、日が暮れると森林からゾウたちが水や木の葉を求めて貯水池の周囲に姿を現す。

 ミネリヤ国立公園に生息している野生ゾウは200頭あまり。貯水池に現れたゾウの群れのなかには母親ゾウや赤ちゃんゾウもいれば、恋人を探しに来た成年ゾウもいる。

 森林地帯の水たまりが干上がる乾期にあたる7月から10月、貯水池はゾウたちの「集会」場となる。人間にとっても、ここに集うゾウの生態を間近に見られる絶好の機会だ。

 アジアゾウは元来、社交的な動物として知られ、ミネリヤ貯水池での「集会」でも、ゾウたちは毎晩さまざまな交流を繰り広げる。

 母親ゾウたちは、子ゾウたちが1頭残らず貯水池で水を飲めるよう気を配り、少年ゾウたちは、互いの鼻を絡ませてレスリングに興じている。一方、若い雄のゾウたちは、雌の気を引こうと懸命だ。

 大きな耳を持つアフリカゾウと比べ、アジアゾウは体温を冷やす身体機能が発達しておらず日陰を好む。このため、ミネリヤのゾウたちが貯水池周辺でくつろぐ時間は、気温が下がった日没の後だ。

 地元ホテルなどは、こうしたゾウの「集会」を観光客誘致に活かす努力をしている。スリランカでは、長引く政府軍と反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Tamil TigerLTTE)」との戦闘で、観光客の足が遠のいている。

 同国政府は2008年の観光客数を前年比20%増の60万人、観光収入を5億5000万ドル(約560億円)と見込んでいる。しかし、スリランカの観光当局によると、1月から7月までの観光収入は2億ドル(約200億円)で、目標は達成できそうもない。

 アジアゾウの寿命は70歳近いが、最近ではゾウの生息地まで人間が踏み込んできたため、ゾウたちが食料を求めて民家付近に現れることが増えてきた。一部のゾウは、スリランカ北部や東部で激化する戦闘を逃れてきたとみられている。

 スリランカの野生動物保護当局によると、2006年には171頭、2007年には193頭の野生ゾウの死亡が確認されているが、その多くは、銃殺、毒殺、感電死によるものだという。100年前には1万2000頭近く生息していたスリランカの野生ゾウは、現在では4500頭まで落ち込んでいる。

 野生動物保護当局に30年近く勤務してきた職員は、「野生ゾウを観察するジープサファリが地元に観光収入をもたらせば、地元住民はゾウが貴重な資源であることを悟る。そうすれば、彼らもゾウを大切に扱うようになるだろう」と、ゾウを主役とした観光に期待している。(c)AFP