【7月1日 senken h】社会の中で山積みにされている問題に対して、自分たちで解決できる方法を模索するために俳優の伊勢谷友介らが立ち上げた「リバースプロジェクト(Rebirth Project)」。衣・食・住を通して、廃棄されてしまう素材などを、デザインを加えることで新たな価値を生み出し、再び世の中に循環させる取り組みだ。いっけんボランティアのリサイクル活動のように聞こえるがそうではない。プロジェクトが持続できるように法人化し、エコをビジネスとして成立させる事業なのだ。

 今回「リー(Lee)」との協業で立ち上げた「リーバースプロジェクト」は、さまざまな理由から廃棄されるデニムを、新たな価値を付けて「再生」させる取り組み。代表の伊勢谷友介と副代表の龜石太夏匡(たかまさ)、リージャパンディレクターの細川秀和に話を聞いた。

―今回のプロジェクトのきっかけは。
龜石(以下K):始まりは、ほんとに単純な発想。衣食住の「衣」の部分で、何か出来ないか話していたときに、「洋服って相当廃棄されてるよね」というところから始まり、僕らにとって身近なデニムはどうなんだろう、そしてリバースプロジェクトに合っているもの…、reとLEE…ree・birthっていいじゃん!みたいなノリで(笑)。でも、その雑談を内輪で終わらせてしまったら意味がない。すぐにアクションを起こしました。

細川(以下H):うちとしても、正規品として販売できない商品をアウトレット以外でどうさばいていくか販路を模索していたので、面白そうだなと思いました。今回は比較的状態の良いA品を使用していますが、これからはB、C品も使っていろいろなアプローチをしていきたい。

伊勢谷(以下I):きっかけは単純でも、商品作りは意味のあるものでなくてはならない。数あるものの中から選んでもらうことで価値を感じられるものにするのが僕らの仕事。デニムをリ・デザインするにあたっては、単なる「カッコいい」だけでなく、誇りや理念を持って身に着けてほしいという思いがありました。

K:僕らの考え方を分かりやすくビジュアルに表現したかったので、アートディレクターの藤元明と話し合って、グラフィックにはAED(自動体外式除細動器)のメタファーとして雷光を使ったり、デニムに付いているフラッシャー(ヒップポケットにさす紙のタグ)にも、馬が人を蘇生させている(=再生させる)デザインにしました。

―正規品として販売できないA品B品を新品同様の価格で売るいうのはお客さんに伝わりますか。
H:売れない商品を焼却するにしても、再生させるにしてもそれだけのコストがかかるということを消費者にも理解してほしい。エコだとしても、例えばペットボトルを焼却処分するのと再生して繊維に変えるのとでは、いろいろな手間がかかって割に合わない場合もある。単純にどちらが良いか比較は出来ないし、それをすべての人に押し付けるつもりもない。ただ、消費者には選択肢として知ってもらう努力はしたいし、それに気付いてもらえたらうれしい。今回のデニムは、僕たちなりの考え方をデザインに反映させているわけで、そこに付加価値を感じてお金を払うかどうかはその人のとらえ方にかかっている。

K:モノを選ぶことは、その人がどのように生きたいかを選ぶことに繋がっていくと思う。

H:グループ会社のエドウイン(EDWIN)と合わせると多量のロスが出ている。よく慈善事業で、ホームレスの人たちや被災地に提供すれば良いというのもありますが、それにも相当な手間やコストがかかっている。しかも、商品であるデニムは会社の資産。それを無償提供するということは、さまざまな問題もあってなかなか難しい。結果、燃やすのが一番手っ取り早いのですが、繊維以外の不燃物と可燃物に分けて焼却するのにもそれ相応のコストがかかる。同じように手間やコストがかかるとしたら、何を選択するか。今回はそうした背景も含めて商品を見てもらいたかった。

I:「知る」ということはすごく大事。積極的に知ろうとこちらからアクションを起こさなければ、受け身では情報は与えてもらえないですからね。そして「捨てるときの意識」を持って欲しいと思います。捨てるのもタダではないことを。(vol.2に続く)(c)senken h

【関連情報】
デニムの再生から見えてくる未来のカタチ/リーバースプロジェクト(2)
特集:senken h 104
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