【4月9日 senken h】観る者がその場面にどれほどの思い入れを持てるか、重要な鍵を握る音楽やファッション。今回はファッションをキーワードにセレクトしてみた。

■『裏切りのサーカス(Tinker Tailor Soldier Spy)』
 常々、マルチな活躍ぶりに脱帽させられるポール・スミス(Paul Smith)。「裏切りのサーカス」でクレジットされている彼の名前をエンドロールで発見した際にもまたビックリ。今回は衣装提供といった関わりではなく、70年代前半のロンドンを演出するためにクリエーティブ面の協力をしたという。ちなみに本作はいかにも英国的なスパイ小説の傑作『Tinker Tailor Soldier Spy』の映画化とあり、味わい深い英国紳士風キャスティングのすばらしさも心憎い。なお公開前後には「ポール・スミス 丸の内店」で、主演のゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)と写真家、ジャック・イングリッシュ(Jack English)による撮影セットでのモノクロ写真展を開催予定。

■『ヘルプ~心がつなぐストーリー~(The Help)』
 60年代前半のアメリカ南部が舞台の「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」。作家を夢見る熱血女子のヒロインが挑む1冊の本は、上流階級出身の彼女の人生において家族のような、愛すべき存在であったメードたちの生の声を伝える内容だ。危険を顧みることなく時代に反した彼女の勇気ある行動の輪が、しだいに広がっていく様子に声援を送りたくなるかも。本作の強力な脇役となるのが、女性たちのキャラクターによりリアリティーを添えるコスチューム。当時のモードを反映したスタイルが目にも楽しい。

■『アーティスト(The Artist)』
 先日発表になった本年度のアカデミー賞作「アーティスト」。主演男優、監督、作曲、そして衣装デザインと最多の5部門で受賞。1920年代のハリウッドを舞台に、白黒のサイレント映画からトーキーへと変わる時代の変遷の中、1人の男優(ジャン・デュジャルダン(Jean Dujardin)のプライドと芸術家魂による苦悩、そして彼のファンでもあった新人女優がスターへと変身していく、2人の人生の縮図をサイレント&モノクロで描写。本作の一つのアイコンといっても過言ではない主人公のタキシード、思えばこのモノクロの衣装に、観客の心はさまざまな思いを寄せるのではないだろうか。余談だが、主人公の愛犬役アギーは、本作でカンヌ国際映画祭パルムドッグ賞を受賞。(c)senken h : text / 宇佐美浩子

【関連情報】
特集:senken h 122
『裏切りのサーカス』 公式サイト <外部サイト>
『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』 Disney公式サイト <外部サイト>
『アーティスト』公式サイト <外部サイト>