経済危機のスペイン、空きビルを占拠する家族らの現状
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【5月28日 AFP】スペイン南部アンダルシア(Andalucia)州の州都セビリア(Seville)に住む67歳のアナ・ロペス・コラレスさんは、約20年間寝たきりの70歳の夫と共に集合住宅へ引っ越してきた。まだ1週間しか経っていないのにすっかり前の家のような気分だというが、実は自分の家ではないし、また家賃も払っていない。
この4階建ての空きビルには、家を失った32家族が住んでいる。彼らが行っているのは「スクウォッティング」と呼ばれる行為で、いわゆる空き屋占拠にあたる。
コラレスさんは毎月500ユーロ(約5万円)の家賃を払えず、夫ともども路上に放り出された。今暮らす建物はスペインで2008年の不動産バブル崩壊以降、各地に出現した売れ残り住宅のひとつだ。ビルの開発業者は行方をくらましており、所有権を主張する者もいない。
同国における住宅バブル崩壊後、スペイン全土に放置された空き家は約100万戸。一方、2011年の家屋立ち退きは5万8000件に上った。
「ここはもう2年以上も閉まったままで、誰1人やって来ない。こんなに大勢が身ひとつで路上にいるご時世に、こういうアパートを閉めっぱなしにしておくのはなぜなのかしらね?」(コラレスさん)
コラレスさん夫婦が占拠する部屋はビル内に1室だけある元モデルルームとなっているため、32家族みんなでこの部屋のキッチンを共用している。昼食の支度をする数人を指差して「ここにいる女性みんながホームレスなのよ」と言う。
■憲法が保障する居住の権利だが…
昨年スペイン全土には経済的不平等や腐敗、記録的な失業率に抗議する「怒れる者たち」と呼ばれる民衆運動が登場した。この運動を組織するメンバーの助けで、32家族はここに移り住んで来た。「怒れる者たち」の1人、アントニオ・ペレスさんは語る。「住宅を要求するのは憲法で保障された権利だ。スペイン憲法には『すべてのスペイン国民は適切な住宅に暮らす権利を有する』と書いてある」
これまでのところ、警察からはとがめられていない。「警察は分かってるんだ。裁判所から立ち退き命令が出れば、彼らはそれを執行しなくちゃならない。けれど今のところ警察は僕たちを守ってくれている」
スペインの失業率が工業国中最高の24.4%に達する中、住宅からの立ち退きはさらに増加するとみられる。経済危機の打撃が特に大きいセビリアの失業率は33%という高さだ。
「他にも同じ立場の人がたくさんいるはず。(この建物の状況は、)2~3年間空き屋になっている建物を探している人のための見本よ」とコラレスさんは言う。「前は知らなかった同士が今は家族のようで、何はともあれうまくやっています。私たちの強さは結びつきのおかげです」
35歳になる娘のアナ・ロペスさんも同じビルに住んでいる。月426ユーロ(約4万3000円)の家族手当で、6歳と18歳の子どもを育てるのに苦戦しており、「(自分でも)払える額の賃貸住宅がほしい」と言う。
4階のアグアサンタ・ケロ・レジェスさん(38)は夫と子ども3人の5人住まい。レジェスさんがセールスの仕事で得る収入は月250ユーロ(約2万5000円)で、やはり半年分の家賃を滞納して追い出されたという。
今後、どれだけこのビルに居続けるのかは、誰にも分からない。
レジェスさんの隣に住み、現在4人目の子どもを妊娠しているラケル・マチュタ・ロドリゲスさん(29)。「ここにずっといるのが明るい未来とは言えないけど、手に入るものを手に入れるしかないのよね」と述べ、占拠している部屋のために中古家具の購入を決めたようだ。(c)AFP/Sylvie Groult
この4階建ての空きビルには、家を失った32家族が住んでいる。彼らが行っているのは「スクウォッティング」と呼ばれる行為で、いわゆる空き屋占拠にあたる。
コラレスさんは毎月500ユーロ(約5万円)の家賃を払えず、夫ともども路上に放り出された。今暮らす建物はスペインで2008年の不動産バブル崩壊以降、各地に出現した売れ残り住宅のひとつだ。ビルの開発業者は行方をくらましており、所有権を主張する者もいない。
同国における住宅バブル崩壊後、スペイン全土に放置された空き家は約100万戸。一方、2011年の家屋立ち退きは5万8000件に上った。
「ここはもう2年以上も閉まったままで、誰1人やって来ない。こんなに大勢が身ひとつで路上にいるご時世に、こういうアパートを閉めっぱなしにしておくのはなぜなのかしらね?」(コラレスさん)
コラレスさん夫婦が占拠する部屋はビル内に1室だけある元モデルルームとなっているため、32家族みんなでこの部屋のキッチンを共用している。昼食の支度をする数人を指差して「ここにいる女性みんながホームレスなのよ」と言う。
■憲法が保障する居住の権利だが…
昨年スペイン全土には経済的不平等や腐敗、記録的な失業率に抗議する「怒れる者たち」と呼ばれる民衆運動が登場した。この運動を組織するメンバーの助けで、32家族はここに移り住んで来た。「怒れる者たち」の1人、アントニオ・ペレスさんは語る。「住宅を要求するのは憲法で保障された権利だ。スペイン憲法には『すべてのスペイン国民は適切な住宅に暮らす権利を有する』と書いてある」
これまでのところ、警察からはとがめられていない。「警察は分かってるんだ。裁判所から立ち退き命令が出れば、彼らはそれを執行しなくちゃならない。けれど今のところ警察は僕たちを守ってくれている」
スペインの失業率が工業国中最高の24.4%に達する中、住宅からの立ち退きはさらに増加するとみられる。経済危機の打撃が特に大きいセビリアの失業率は33%という高さだ。
「他にも同じ立場の人がたくさんいるはず。(この建物の状況は、)2~3年間空き屋になっている建物を探している人のための見本よ」とコラレスさんは言う。「前は知らなかった同士が今は家族のようで、何はともあれうまくやっています。私たちの強さは結びつきのおかげです」
35歳になる娘のアナ・ロペスさんも同じビルに住んでいる。月426ユーロ(約4万3000円)の家族手当で、6歳と18歳の子どもを育てるのに苦戦しており、「(自分でも)払える額の賃貸住宅がほしい」と言う。
4階のアグアサンタ・ケロ・レジェスさん(38)は夫と子ども3人の5人住まい。レジェスさんがセールスの仕事で得る収入は月250ユーロ(約2万5000円)で、やはり半年分の家賃を滞納して追い出されたという。
今後、どれだけこのビルに居続けるのかは、誰にも分からない。
レジェスさんの隣に住み、現在4人目の子どもを妊娠しているラケル・マチュタ・ロドリゲスさん(29)。「ここにずっといるのが明るい未来とは言えないけど、手に入るものを手に入れるしかないのよね」と述べ、占拠している部屋のために中古家具の購入を決めたようだ。(c)AFP/Sylvie Groult