【5月22日 AFP】ポリオの感染拡大を食い止めるために世界保健機関(World Health OrganizationWHO)が出した指針が、ポリオを最も国外に広めている国とされるパキスタンで、住民がワクチン接種に殺到するなどの混乱を招いている──。

 WHOは5月初頭、パキスタンなどの国々で国境を越えてポリオの感染拡大が新たに広がっていることを受けて「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

 パキスタンではポリオが依然としてまん延しており、今年の世界のポリオ感染者数の80%がパキスタン国内で診断されている。同国のポリオ感染者数は昨年、2012年の58人から増え、91人に達した。今年はすでに世界74例のうち59例がパキスタンで確認されている。

 そのため、WHOはパキスタン当局に対し、国外旅行を予定している国民と同国に長期滞在する全ての人にワクチン接種を行うよう勧告。だがパキスタン政府の対応は、ワクチン接種証明をめぐる混乱を生み、住民がワクチン接種に殺到する事態となった。

 これら一連の混乱を受け、WHOと綿密な事前協議を重ねていたパキスタン政府に対しては、勧告後に起きる事態を想定し、より良い対応ができたのではとの批判の声が多く上がっている。

■夏の外国旅行シーズン目前の混乱

 パキスタン政府は、国内に4週間以上滞在した人全員に対し、過去にワクチン接種を受けていた場合でも、国外に移動する際はワクチン接種を受けるよう義務づけた。

 だがこの措置により、政府が旅行者のワクチン接種に指定した公共医療機関は業務過多となり、一方で民間の医療施設も外交官や記者、外国人らへのワクチン接種で混み合っているという。

 パキスタンには、外国に移住した家族や親戚に会いに行ったり結婚式に出席したりする夏季の習慣がある。ポリオをめぐる一連の混乱は、この夏の出国ピークを控えた時期と重なった。