【11月3日 AFP】南アフリカラグビー協会(SARU)のジュリー・ルー(Jurie Roux)最高経営責任者(CEO)は2日、同国代表の指揮官で解任の危機にあるハイネケ・メイ ヤー(Heyneke Meyer)ヘッドコーチ(HC)の去就について、12月4日に決定すると発表した。

 先月30日に行われたW杯イングランド大会(Rugby World Cup 2015)の3位決定戦で勝利を収め、ベスト8で終わった2011年大会より好成績を記録したスプリングボクス(Springboks、南アフリカ代表の愛称)だが、メイヤーHCは世間とメディアから強い批判を浴びている。

 南アフリカ代表のHCは、これまでも2007年大会で母国を優勝に導いたジェイク・ホワイト(Jake White)氏が契約更新に至らず、同代表初の黒人HCとなったピーター・デヴィリアス(Peter de Villiers)氏も4年前の決勝トーナメントで敗退したあとに解任されている。

 辛口の世間はメイヤーHCについて、時代遅れでフィジカルに頼る戦略に固執したほか、代表チームがテストマッチ11試合で5敗を喫している期間に、変革目標を一度も達成できなかったと批判している。

 特に今回のW杯で南アフリカ代表は、1次リーグの試合で、ティア2(世界の2番手グループ)の日本代表に32-34で敗れている。これは、29年にわたるW杯の歴史で史上最大の番狂わせとされている。

 その後、南アフリカは勢いを取り戻して準決勝まで勝ち進んだものの、最終的に大会を制したニュージーランドに18-20で敗れた。

 スプリングボクスはまた、ダーバン(Durban)で開催された南半球4か国対抗戦のザ・ラグビーチャンピオンシップ(The Rugby Championship 2015)でも、アルゼンチンに25-37で初黒星を喫している。

 SARUと南アフリカ・スポーツ省は、メイヤーHCに対して23人の登録メンバーに最低7人の黒人選手を毎試合選出する目標を課していた。

 しかし、メイヤーHCはその目標に到達できず、W杯では3人の黒人選手を先発起用しただけで、4年前の状況と何ら変わることはなかった。

 メイヤーHCは、新たに4年契約を結べるはずだとして高まる批判を一蹴しており、黒人選手に対する人種差別疑惑に関しても、「心にやましいところはない」と反論している。

 一方、SARUは発表した声明のなかで、メイヤーHCをはじめコーチ陣や医療・庶務スタッフらとの契約期間は年内で終了すると語っている。

 ルーCEOは、「管理責任者やコーチ陣の任命権は評議会が持っているが、スプリングボクスの指揮官はその例外となっており、最終的にはSARUの総会で決定される」と述べた。

「SARUは12月4日に総会を開き、2016年のスプリングボクス指揮官について話し合う予定だ」

「すべての関係各位に決定が通達され次第、公式発表は12月5日以降に行われることになっている」

「この話題は、世間から大きな注目を集めていることを自覚している。これは、われわれが組織として最も重要な決断を迫られるものの一つだ」

「そのため、サポーターの皆さんには、われわれが発表を行う前に熟慮すべき多くの懸案事項があることをご理解いただきたい」

 ルーCEOはまた、「これらの会議は、個人と組織構造を尊重して公の場で開くことはできない」と強調している。

 メイヤーHCの解任については地元のブックメーカーが賭けに乗り出しており、オッズではニュージーランド出身で元シャークス(Sharks)指揮官のジョン・プラムツリー(John Plumtree)氏が最有力候補とされている。

 そして同じくニュージーランド出身で南アフリカを拠点として活動している元ゴールデン・ライオンズ(Golden Lions)HCのジョン・ミッチェル(John Mitchell)氏、そして元南アフリカ代表HCのニック・マレット(Nick Mallett)氏らも有力候補とされている。

 さらに、日本を拠点としているアリスター・クッツェー(Allister Coetzee)氏、2015年のカリーカップ(2015 Currie Cup)覇者であるゴールデン・ライオンズのヨハン・アッカーマン(Johan Ackermann)HC、そしてウェスタン・プロヴィンス(Western Province)でラグビー・ディレクターを務めるハルト・スマル(Gert Smal)氏もオッズの対象となっている。

 アパルトヘイト政策による孤立が終わり、南アフリカが1992年にテストマッチへの参戦が再び認められて以降、同国の代表指揮官を務めた外国人は一人もいない。(c)AFP