中国で絶えない深刻な児童虐待事件 「児童虐待罪」新設求める声
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【11月29日 東方新報】中国・遼寧省(Liaoning)撫順市(Fushun)で今年5月、6歳の女の子童童(仮名)ちゃんが実母と連れあいの男から虐待を受けていることが発覚した。その残酷さからメディアに繰り返し報道され、「児童虐待罪」が必要だという声が上がっている。
5月20日、童童ちゃんは撫順市の病院に連れ合いの男に連れられてやってきた。ろ骨骨折など全身に10か所の傷、左腕など複数のやけどがあり、右太ももには長さ5センチの針が刺さったままだった。連れあいの男は医師に「この子はふろに入ってやけどをして、さらに転んでけがをした」と言い張った。
通報を受けた警察が捜査を開始すると、童童ちゃんは繰り返し暴力を受けていたほか、キャットフードを食べさせられたり、たばこをのみこむよう強要されたり、さらにはライターで顔をあぶるなどの虐待が次々と判明した。
母親は2018年に離婚し、2019年末から男と同居。年明けから虐待が始まったという。母親は19年9月に童童ちゃんの写真をSNSにアップして「私があなたを守る傘になる」と投稿し、虐待が行われていた今年4月にも「家族3人が仲良しという動画を投稿していた。近所の住民は「親の印象は良く、虐待していると思わなかった」と話す。
母親と連れあいの男は9月8日、故意傷害罪と虐待罪で起訴され、これから司法の裁きを受けることになる。ただ、故意傷害罪は悪質な傷害事件で一般的に適用され、虐待罪も「保護もしくは看護されている人を虐待」する行為を処罰するもの。どちらも児童虐待に特化した罪ではない。直接の暴力以外、言葉による暴力や精神的に追い詰める行為が含まれるか定義もあいまいだ。
虐待罪の量刑は最も重くて懲役7年。故意傷害罪は被害者が重傷の場合は懲役10年まで。最近の児童虐待事件では、懲役4年や懲役2年半という判決が出ており、「罪が軽い」という意見も少なくない。現行法でも未成年者保護法などで児童虐待を禁じる条文はあるが、法曹界からは「児童虐待罪を新設すべきだ」「故意傷害罪を問う場合でも、大人への傷害より求刑や判決の量刑を重くすべきだ」という指摘がたびたび出ている。
中国には「虎毒不食子(どう猛な虎もわが子は食べない)」という言葉があるが、一方で「不打不成材(痛い思いをしなければ子どもは成長しない)」「棍棒底下出孝子(せっかんが立派な子どもをつくる)」ともいわれ、体罰を必要悪とする風潮は今も根強い。
北京青少年法律援助研究センターが2008~2013年の虐待事件697例を調査したデータでは、実の父母からの虐待が75%、血のつながりがない親からが10%、祖父母が12%で、子どもが自ら外部に虐待を訴えたのはわずか2%だった。児童虐待事件が起きるたびに毎回この少し古いデータが引用されており、全国的な実態調査が進んでいないことを逆に証明している。
世論の高まりを受けて政府は今年10月、未成年者保護法改正案を成立させた。児童虐待を厳罰化する方針を示し、教育、医療、託児施設などの従事者は未成年者への権益侵害を発見した場合は報告することを義務付けた。
虐待を受けた童童ちゃんは現在、治療により回復が進んでおり、「私のけがを治してもらったから、私も将来お医者さんになりたい」と笑顔を見せている。ただ、今でも「ママ」という言葉を聞くと拒絶反応を起こし、夜は明かりをつけたままでないと寝られないという。児童心理の専門家は「虐待を受けた子どもは心理的影響が強く残り、成長後も自傷行為をしたり命を軽んじたりする傾向は強い」と指摘する。大人の努力と知恵で、一刻も早く児童虐待を根絶することが求められている。(c)東方新報/AFPBB News