中国のフィットネスクラブ会員が7000万人に 「筋力アップ」「体形維持」が人気
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【3月25日 東方新報】中国ではここ数年、従来の太極拳のような健康維持法と異なり、筋力アップや体形維持を目的としたフィットネスブームが急速に広がっている。フィットネスクラブの会員数は7000万人。コロナ禍の影響で「おうちフィットネス」も定着し、オンラインのトレーニングアプリは登録ユーザーが3億人に達している。
上海体育学院(Shanghai University of Sport)経済管理学院とビッグデータ企業が3月22日に発表した「中国健康産業データリポート」によると、2020年末で全国のフィットネスクラブは4万4305店を数え、会員数は総計7029万人に達した。新型コロナウイルス感染症の影響で店舗数は2019年の4万9860店から11ポイント減少したが、会員数は3ポイント増加している。会員の年間支出額は83%が3000元(約5万円)以内。ちなみにフィットネスクラブやスタジオのコーチは合計約90万人で、平均月収は新型コロナの影響で前年比20ポイント減の7300元(約12万円)という。
中国で健康法や運動と言えば、早朝の太極拳、公園で見かける蹴鞠(けまり)のような羽根蹴り遊び、集団で踊る「広場舞」などが代表的で、他にも薬膳料理やマッサージ、はり・きゅうなど「健康的に長生きする」ものが主体だった。中国では男性を中心に、やせているより太り気味の方が「頼りがいがある」イメージがあり、太っていることはむしろ魅力的に映る。しかし最近の20~40代は太極拳や広場舞に「古い」「ダサい」イメージを持ち、旺盛な消費力を背景にフィットネスで「鍛える」「体を美しく保つ」スタイルに変わってきている。
新型コロナウイルスが最も広まった昨年1~3月は全国のフィットネスクラブは休業を余儀なくされたが、そこで広まったのが「オンラインフィットネス」だった。特に普及したのが、オンラインでトレーニングプログラムを提供するアプリ「Keep」だ。フィットネス愛好家の王寧(Wang Ning)氏が2014年に設立し、2017年には早くも登録ユーザーが1億人に達し、コロナ禍を経て現在は3億人が登録している。運動器具を使わずに家にいながら自分だけのトレーニングプログラムを組み、運動記録を管理することもできる。友達や運動仲間と記録を共有し、互いに競いながらトレーニングもでき、多くの人が自宅で汗を流している。
こうしたフィットネス志向は政府も後押ししている。2016年には中国国務院が「国民健身計画2016~2020」という5か年計画を発表し、定期的に運動する国民を増やしていく方針を示した。中国は2015年まで「一人っ子政策」を続けた影響で、2035年には65歳以上の高齢化率が21%を超える「超高齢化社会」が到来すると予測されている。高齢者の社会保障費が膨大になれば経済成長の大きな足かせとなるのは確実なため、1人でも多くの健康な国民を増やしたいのが本音だ。「かっこいい体をキープしたい」という個人の思いと「経済成長をキープしたい」という政府の思惑が相まって、今後もフィットネス市場は成長していきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News