【3月23日 東方新報】2~3月に行われた北京冬季五輪・パラリンピックでは、中国が開発に関わった新型ドーピング検査器材「乾燥血液スポット(Dried Blood Spot、DBS)」が初めて導入された。

 DBSは選手の指先から60マイクロリットルの血液を採取して試験に落とし、乾燥させて密封保存する。採取の時間は数分で、すぐドーピング検査室に送ることができる。サンプルはスイスで保存され、10年間は再検査が可能。採取時間の短縮やサンプルの安定性、輸送・管理の簡便化、コスト削減などにつながっている。

 中国アンチドーピングセンターは2019年、国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)などと協力し、DBSの研究開発に参加した。中国アンチドーピングセンターの陳志宇(Chen Zhiyu)センター長は「DBSは革新的な検査方法だ」と称賛。昨年夏の東京五輪に向けて試験的に導入し、昨年9月に陝西省(Shanxi)で行われた全国運動会(日本の国民体育大会に相当)では、世界の総合競技大会で初めて正式にDBS技術を導入した。そして今回の北京大会で、ドーピング検査の効果と効率を大いに向上させた。

 IOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は「DBSはドーピングとの闘いにおける革命的な技術だ。WADA、IOCや米国、中国、スイス、オーストラリアなどの検査機関による共同作業の成果だ」とたたえる。WADAのウィトルド・バンカ(Witold Banka)会長も「短期的には静脈採血検査に取って代わるものではないが、DBSはより多くのアスリートを検査し、より多くのサンプルを保存することに適している」と評価した。

 中国は2019年、北京冬季五輪に向けて「アンチドーピング活動発展計画」を発表。2020年には選手に禁止薬物の使用を強要・扇動した者に最大3年の懲役および罰金を科す刑法改正案を可決し、国を挙げてドーピングを撲滅する姿勢を明確にしている。DBS開発もその一環だ。

 北京冬季五輪組織委員会によると、各国の国際ドーピング検査官は「自国の検査機関で研究したい」とDBS器材を持ち帰っているという。北京大会は中国の技術力とアンチドーピングの姿勢を世界にアピールする機会にもなった。(c)東方新報/AFPBB News