【6月8日 東方新報】中国では新年を祝う春節(旧正月、Lunar New Year)、先祖を供養する清明節(旧暦の3月)、端午節(旧暦の5月5日)、満月にお供えをして家族だんらんを楽しむ中秋節(旧暦の8月15日)が4大伝統行事といわれる。

 いずれも旧暦に基づくため日にちは年によって異なり、今年の端午節は6月3日。この日は祝日で3~5日が3連休となる。

 日本の「こどもの日」のルーツでもある端午節で、伝統的に食べるのが粽(ちまき)だ。ちまきはもち米で作り、中に肉や豆、あんを入れる。竹やアシの葉っぱで三角形か長方形にかたどり、草や縄で固定する。こう説明すると「古臭い習慣」のように感じるが、最近の中国では若者もちまきを楽しんでいる。

 アワビ入りやカレー味、ギョーザ味、植物性タンパク質を使った代替肉など、新しいちまきが次々と登場。若者に人気のティードリンク専門チェーン「奈雪の茶(NAYUKI)」や「喜茶(HEYTEA)」もオリジナルちまきを販売している。1年で淘汰(とうた)されてしまうような変わり種を含めて毎年100種類近くが販売され、「もはや、ちまきに包めないものはない」と言われるほどだ。

 ちまきの老舗「五芳斎(Wufangzhai)」の公開資料によると、商品の粗利益率は毎年40%台に上るという。利益を見込んで他の業界からもちまき市場に参入し、2024年には市場は約103億元(約2022億円)に成長すると予想されている。最近は「ペット向けちまき」も登場。中国ではいま空前のペットブームを迎え、ペットの犬・猫は計1億匹を超える。ペット向けちまきはカモ肉やイモ、卵などを使い、一般のちまきと見た目は特に変わらず、自分たちを「ペットの奴隷」と称する溺愛派の若者たちの間で人気となった。

 旧暦の5月初めは初夏。暑くなる季節を迎え、昔は疫病が発生しやすい時期だった。このため、端午の節句にちまきを食べて疫病から身を守り、家族の健康を守るという意味があった。コロナ禍の今、いにしえの伝統食を食べ、自分と家族を守る思いをあらためてかみしめている。(c)東方新報/AFPBB News