【6月25日 東方新報】中国・四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で今年33歳となる女性、雁鴻(Yan Hong)さんは、空き缶を使って宮廷貴族の髪飾りを作るアーティストとして有名だ。動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili))」に投稿した動画の再生回数は1000万回を超える。空き缶が材料とは信じられない腕前から「手工大神」と呼ばれている。

 雁さんは地元の大学・川北医学院を卒業して看護師を2年間務めた後、2015年にジュエリーや化粧品を販売する店を構えた。「鉄飯碗(鉄の茶わん=安定した収入が得られる意味)」の仕事を手放して自営することに周囲は反対だったが、自分の意志を貫いた。雁さんは「私は看護師の時は強い女として振る舞っていましたが、私の心の中には今も、美しいものが大好きな小さな女の子がいるんです」と思いを語る。

 店を充実させるためメークアップアーティストの研修を受け、結婚式のメークの仕事もするように。新婦の髪飾りにより美しく手を加えることが評判になっていた。そんな時、清朝が舞台の宮廷ドラマ『延禧攻略(邦題:瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜)』に夢中になった雁さんは、番組に登場する「絨花(じゅうか、花や鳥をあしらった髪飾り)」を見よう見まねで作ってみた。それから次々と人気宮廷ドラマの髪飾りを再現し、インターネットで公表した。

 2019年からはオリジナル作品に力を注ぐようになった。洗った空き缶を切り開いて平らにして、紙やすりで塗料を落とし、染色したガチョウの羽根を裏側に接着する。それからアルミ板を切り取り、針金や装飾品を取り付けていく。1つの作品に100個以上の空き缶を使い、完成まで2か月かかることもある。京劇の鳳冠、敦煌の壁画に描かれた貴族の装飾品、古書「山海経」に登場する神獣・九尾狐をイメージしたゴージャスな髪飾り…。そのクオリティーの高さに、ネットを通じた注文も相次いでいる。中国の若者の間では古代の衣装「漢服」を着ることがブームとなっており、結婚式で漢服を着るカップルが雁さんに髪飾りを注文している。

 雁さんはオンラインショップで半加工した髪飾りのパーツ販売も始め、「ビリビリ」で作り方の手順を公開している。「中国の伝統文化の魅力を広げるため、新しいブランドを作っていきたい」。雁さんの夢は膨らむ一方だ。(c)東方新報/AFPBB News