【10月16日 AFP】イランの首都テヘラン北部にあるエビン刑務所(Evin Prison)で15日夜、火災が発生し、衝突も起きた。同国では、服装規定違反を理由に逮捕された女性の死に端を発する抗議デモが5週目に突入。エビン刑務所には、デモ弾圧で拘束された数百人が収容されているとされる。

 ノルウェーに拠点を置く人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)がツイッター(Twitter)で共有した動画からは、夜空を焦がす炎と煙や、銃声とみられる音が確認できる。

 また、当局に対する抗議デモや警察の違反行為を監視しているソーシャルメディアのチャンネル「1500 tasvir」は、「エビン刑務所で火災が広がっている」「爆発音が聞こえた」と伝えた。一連の抗議デモで掲げられてきた、「独裁者に死を」というスローガンを繰り返し叫ぶ人々を捉えた動画も公開された。

 国営イラン通信(IRNA)は、「15日夜に衝突が起きた」との治安当局幹部の話を報じた。「暴徒」が施設に火をつけたという。少なくとも8人が負傷したが「現在、事態は完全に収まった」としている。

 エビン刑務所には、フランスとイランの二重国籍を持つ人類学者のファリバ・アデルカ(Fariba Adelkhah)氏や、米国籍を有する実業家のエマド・シャルギ(Emad Sharghi)氏、国際映画祭で受賞歴のある映画監督のジャファル・パナヒ(Jafar Panahi)氏らが収容されているとされる。

 イランでは先月、服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕されたクルド系イラン人女性マフサ・アミニ(Mahsa Amini)さん(22)が、3日後に拘束下で死亡。1か月にわたり抗議デモが続き、IHRによれば、これまでに少なくとも108人が弾圧の犠牲となった。

 また、南東部シスタン・バルチスタン(Sistan-Baluchestan)州ザヘダン(Zahedan)では、10代少女が警察署長に性的暴行を受けたとの情報をめぐって起きたデモで、少なくとも93人が死亡している。

 最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師は一連のデモについて、米国やイスラエルなどの「敵」が「暴動」を扇動していると非難している。(c)AFP