中国で生成AIによる写真サービスが爆発的人気 悪用の懸念も
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【8月8日 東方新報】「とてもかわいく写っている、とお母さんから褒められた」「ネットで言われているほど本物っぽくはないけど、確かに私らしさはあるかも」
わずか9.9元(約196円)で利用できる生成AI技術を使った写真サービス「妙鴨カメラ」の出来栄えが、中国で話題を呼んでいる。
「妙鴨カメラ」とは、中国の人気チャットアプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」のユーザーが利用できる機能として登場。6月30日に試験的に運用を開始、正式なサービスは7月17日から始まったが、3日後の20日には写真の仕上がり待ちが5000人近くに達するほどの人気となった。
「妙鴨カメラ」を利用するためには、まず「デジタル分身」を作成する。そのために自分の正面の顔写真をアップロード。さらに角度を変えて撮影した写真を20枚追加する必要がある。写真の明るさや鮮明さなど条件が合わない場合は即座にシステムにはじかれてしまう。条件を満たした写真を20枚もそろえるのは結構な手間だ。
料金はその後に払う。今は期間限定のサービスで9.9元だが、本来の利用料は29.9元(約591円)。料金を払い終えると「あなたの前に5446人分を制作中、大体8時間待ちです」などと表示される。今や7〜8時間待ちは当たり前、十数時間待ちと表示された人もいたという。
この時間を根気強く待つと「デジタル分身」が完成し、写真3枚が作成される。それに好みの服装や背景などを選んで組み合わせられるという仕組みだ。
アップロードの手間や待ち時間の長さへの不満、写真の出来栄えにがっかりしたという声も聞かれるが、それは期待値との兼ね合いであろう。
写真館で費用や手間をかけなくても、美しい肖像写真ができあがる。人びとはそんな新技術にワクワクと胸を躍らせた。爆発的な人気ぶりがそれを証明している。だが、アップロードした顔写真やAIに生成された写真が、その後どう扱われるのかふと不安になった。個人情報の扱いは、サービスの満足度とはレベルの違う根源的な問題だ。
当初、「妙鴨カメラ」側がユーザーのコンテンツを自由に利用できるという利用規約があったからだ。「メタなどの仮想空間を含む全世界で、今後開発されるものも含むいかなるメディアや技術において永久的に使用できる」という趣旨だった。ユーザーの指摘を受け、「妙鴨カメラ」側は、「当初の規約は誤り」と謝罪した。声明を発表し「アップロードした写真はデジタル分身の作成のみに使われ、他の用途には使われない。分身作成後に自動的に消去される」と約束した。だが、「妙鴨カメラ」が当初その規約を盛り込んだ本来の目的は不明だ。
「デジタル分身」を作成するにあたって、写真を本人のものと厳格に判断するプロセスがない点を問題視する声もある。実際に他人の写真で「デジタル分身」が作れてしまったケースもあった。「妙鴨カメラ」に限ったことではないが、他人の顔をアイコラのように勝手にわいせつ写真に組み合わせるなどの悪用もできてしまう。
生成AIは新しい技術だけに、個人情報との兼ね合いは今後も慎重に判断していく必要がある。今年8月15日から施行される「生成AIサービス管理暫定措置」でも、AIが学習に使用する情報が、個人情報に関わる場合には本人の同意やその他の法律や規定に合うことが必要、と明確にうたっている。(c)東方新報/AFPBB News