【8⽉12⽇PeopleʼsDaily】中国・陝西省(Shaanxi)漢中市(Hanzhong)洋県(Yang)では、青空に舞うトキをよく見かける。秦嶺山脈の南麓にあるこの小さな地域にとって、トキは「最も輝かしい名刺」だ。

 20世紀になってからトキは激減し、一時は絶滅したと考えられた。1981年に中国の研究者が洋県内で世界に7羽しか残っていない野生のトキを発見した。それ以来、洋県はトキの保護に力を入れてきた。トキの個体数は徐々に回復した。現在では世界のトキの個体数は7000羽を超え、「絶滅危惧種を救う世界の成功モデル」と称賛されている。

 トキは洋県の農地のいたるところで見られる。農民たちは水田で腰をかがめて作業に精を出し、トキはその背後で飛び跳ねながら餌をついばむ。村人は「化学肥料も農薬も全く散布していません。全住民でトキを守っているのです」と説明した。

 生息地の保護と修復、個体数の監視、コミュニティーの共同管理などによる野生のトキの保護に加えて、保護スタッフはトキの人工繁殖技術と野生放鳥を模索してきた。陝西省ではトキの人工繁殖個体群基地5か所と野生放鳥個体場所4か所が設立された。野生のトキの生息地は当初の5平方キロメートル未満から1万6000平方に拡大した。

 中国におけるトキの分布は、北京市、上海市、浙江省(Zhejiang)、四川省(Sichuan)にまで拡大していることが分かった。中国はまた、韓国と日本にトキ14羽を提供した。

 秦嶺山脈の高くそびえる山々や丘陵地帯は、動植物資源に恵まれている。陝西省は秦嶺山脈で自然林保護、自然保護区建設、農地を森林や草原に戻すことなどによる生態保護を最優先課題にしている。秦嶺山脈内では総面積9200平方キロの116の各種保護区が設けられた。保護区では、省内の自然生態系の75%以上、野生動植物の個体群の70%以上が有効に保護されている。

 モノのインターネット(IoT)による監視、赤外線画像による識別、ドローンによる巡視、「環境保護スマート・ブレーン」の設立……。陝西省では「空地一体型」の秦嶺生態環境三次元遠隔監視システムが構築されつつある。

 漢中市寧強県(Ningqiang)には、長江(揚子江、Yangtze River)支流の漢江(Han River)の源流である玉带河の水源がある。県の環境保護監視所の俞波(Yu Bo)さんは10年以上にわたり2か月に1度、水源でサンプルを収集して水質を確認してきた。水質に問題があれば直ちに対策を施して、影響を迅速に最小限に抑えるという。

 陝西省は住民の移住や汚染企業の取り締まりを含めて、水源地域の環境を保護している。そのための資金もきちんと投入している。そのおかげで、省内の河川や湖沼の水質と生態系が維持され、省外に流れていく川の水質も「2類」の基準を安定して満たしている。

 陝西省から流れ出す河川の水は北京、天津市(Tianjin)、河北省(Hebei)、河南省(Henan)などの20以上の大中都市に到達する。6000万人近くの人びとが陝西省から流れ出す水の直接の恩恵を受けている。(c)People’s Daily/AFPBB News