【10月17日 東方新報】中国の携帯キャリア大手の中国電信(チャイナテレコム、China Telecom)は、人工衛星の信号を利用して個人の携帯電話で直接、通話やショートメッセージの送受信を可能にするサービスを9月から開始した。中国電信の委託により中国で自主研究開発された通信衛星「天通1号」を利用したもの。5Gと衛星の融合通信の実用化であり、中国全土と領海をカバーする。

「携帯電話の衛星サービスは本当にクールで実用的。私たち記者の仕事に助かります。一年中、外を走り回っているので、スマホに衛星電話を直接ダイヤルできるSIMカードを1枚入れておくだけなので負担にもならないし安心です」

 そう話すのは、五輪やアジア大会を含め、スポーツの最前線で15年にわたって取材を重ねてきたベテラン記者。

 この記者のみならず、多くの人は自分の携帯で衛星電話が可能になれば、身の安全を守るツールが一つ増えたと感じるはずだ。遠洋作業や山間部で輸送業務に携わる人、全国を出張で飛び回るビジネスマン、奥地旅行や探検の愛好家…。地上の基地局の信号が届かないエリアに頻繁に行くような人であっても、衛星を通じて常に外部との連絡が可能になる。事故や遭難の際にも、緯度経度付きの位置情報を送信し救助を求めることできる。

 衛星通話対応のスマホをそろえれば、これまで使ってきたSIMカードや番号を変える必要がないという。現在契約している料金パッケージも変更する必要もなく、月々10元(約204円)の追加料金を加えるだけで、2分間まで通話無料、それを超えた国内通話料金は1分ごとに9元(約184円)、ショートメッセージの発信は1通あたり5元(約102円)で受信は無料だというから、料金的にもハードルは低い。

 こうした中で、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)は9月下旬、Metaシリーズスマホの最新機種で、衛星通話対応のMate60RSを発売した。販売早々に北京市の繁華街・王府井(Wangfujing)のショップを訪れた男性客はこう話す。

「一番印象に残ったのは、衛星通話の対応機能です。よく旅行に行くのですが、特に砂漠など旅先の多くで携帯の電波がなくなってしまいます。仕事でも出張が多いので、危険にあった時には本当にこれで命が救われると思います。個人的にはとても安心感を覚えます」

 別の男性は、日進月歩の中国の通信環境に感慨を隠さなかった。

「10年前には、私自身はまだボタンを押すタイプの携帯を使っていたはずです。インターネットの新技術の発展と通信技術の不断の革新で、今や携帯電話を衛星端末として使うことができるようになりました。通信における飛躍で大きな突破口だと思います」

 5G通信網で世界に先駆けた中国は、携帯電話での衛星通信の実用化でも好調なスタートを切ったようだ。(c)東方新報/AFPBB News