【3⽉9⽇ Peopleʼs Daily】中国の古人は長い農耕の経験を通して春の種まき、夏の成長、秋の収穫、冬の貯蔵を持つ1年の周期の感覚を身に付けた。収獲が終わればその年の成果を祝い、新たな種まきに備えて心を新たにする。人びとはその際に天を敬い、先祖を祭り、幸福を祈った。

 春節(旧正月、2024年は2月10日 Lunar New Year)の行事は、全ての人が身をもって参加する美の創造であり、体験でもある。まず、各家庭は魔よけである「門神」の絵や吉祥の図案による「年画」、「福」の字、窓の花、切り絵、対句形式のめでたい文句を書いた「対聯」などを飾り付ける。いずれも庶民が熟知している内容で、深紅の色を主に使って図柄は鮮明で誇張されており、何度見ても飽きない。これらの民間絵画や切り絵、文字は大衆の趣味や願いを十分に表現しているだけでなく、伝統的な家屋にとてもよく似合う。

 室内では机の上に季節の果物、花の盆栽、骨董、奇石品を置く。「歳朝清供」と呼ばれる飾り付けだ。華麗で優雅なものも質朴なものも、清らかなものもあるが、いずれもめでたく、目を楽しませて希望を感じさせてくれる。

 新たな年を迎えるに当たっては、「年夜飯」など普段より豪華な料理を食べる。先祖を祭る意味もあり、豊かで素晴らしい年を願う意味もある。山東省(Shandong)の膠東地区の風習では、春節の1週間ほど前のかまどの神を祭る「小年」の日から、各家庭はナツメが入った蒸しパンや祝いの菓子、寿饅頭を作る。いずれも縁起の良さを感じる食べ物で、贈答品としても使う。つまり、人々が祝賀の気持ちを共有するための食べ物でもある。

 春節期間中には、多彩な行事や遊びがある。例えば竹馬、獅子舞、竜の舞い、秧歌(ヤンコー)と呼ばれる集団舞踊などの民間芸能が披露される。演じ手の衣装や化粧には地元ならではの特徴も多く見られる。太鼓が力強く鳴らされ大勢の見物人の祝祭の気分はいよいよ盛り上がる。また、春節前日の大みそかから旧暦1月15日の元宵節までは多くの店や家が赤いちょうちんをつるす。中華民族の素朴な感情の表出が辺りに満ちあふれる。

 中華民族は伝統から現代へと進み、中華文明は農耕文明から工業文明、情報文明へと発展してきた。そのため、春節の行事にも変化が生じた。しかし華やかさと盛大さは一貫している。例えば、春節には万里の道をものともせず故郷に戻って家族や親族と共に過ごそうとする習慣は、交通機関が発達した時代になったからこそ成立した。そしてこの習慣は春節の文化として、すでに定着した。また春節期には中国の古い服装を身にまとって外出する若者がとりわけ多い。また、干支(えと)にまつわる新たなデザインなどがもてはやされる。

 伝統的な美意識は革新されたが、依然として熱烈で深みがある。伝統に新たなものを追加した春節文化が、若い世代の人々の新たな共感を呼んでいる。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News