【8⽉22⽇ Peopleʼs Daily】中国・海南省(Hainan)三亜市(Sanya)は人気観光都市であることもあり、水需要が非常に大きい。水源としているのは赤田ダムだ。赤田ダムは三亜市内にあるが、周辺の森林のほとんどが保亭リー族ミャオ族自治県(Baoting Li and Miao Autonomous County、以下「保亭県」)内にあるので、三亜市の水利用権はわずかだ。逆に保亭県は水資源の89%を利用できる。保亭県側の問題は、県内の227.75平方キロが環境整備の責務を担う海南熱帯雨林国立公園(以下、「公園」)だが、資金力に乏しいことだ。

 そこで三亜市と保亭県は2019年から、赤田ダムの水質を3か月ごとに検査し、基準を上回っていた場合には三亜市が保亭県に補償金を支払う協定を結んだ。2021年8月には、省が3億3000万元(約67億7000万円)、三亜市が1億8000万元(約36億9000万円)、保亭県が9000万元(約18億5000万円)を拠出して基金を設立し、生態保護のための行動と実績によって三亜市と保亭県に褒賞を供与する取り組みも始めた。

 これらにより赤田ダムの周辺環境は大きく改善され、取水口の水質等級はそれまでの3類から2類に引き上げられた。

 公園は全省の主要な水源地だ。海南省は赤田ダムの事例を手本に、「上流で水質保護、下流で補償」方式の実行を進め、公園に関わる九つの市県で同方式が導入された。

 国立公園内に人が居住すれば、どうしても汚染源になる。そのため移転政策も実施され、該当地区に住む357人が2022年に新たに用意された村落に越した。村落には幅が広い舗装道路があり、その両側には小さな洋風住宅が並び、隣接する店舗はにぎやかだ。電気自動車(EV)用の充電スタンドもある。山から越してきた黄金草(Huang Jincao)さんは、「衣食住のすべてが便利になりました」と話した。

 先祖代々、山に頼って生きてきた人々の暮らしは、どのように保障されたのか。新たな村に越した梁弟(Liang Di)さんは、「行政は各世帯に1店舗と、1人当たり5ムー(約0.003平方キロ)の生産用地を割り当てました。しかも5年間は、1ムー当たり毎年500元(約1万円)の生産補助金があります」と説明した。

 海南省はさらに、森林生態利益補償と天然林保護補助を推進している。この2種類の生態補償形式はすでに、公園の全域に適用されている。2023年に中央政府と海南省政府は、公益林と天然林資源保護プロジェクト財政特別資金として2億2374万元(約45億9000万円)を投じた。

 住民の積極性を引き出す取り組みもある。公園管理局五指山分局の鍾仕進(Zhong Shijin)局長は、「協力保護協定の締結や生態公益ポストの設置などを通じて、地元住民が国立公園を共に管理するよう導いています」と説明した。2023年8月時点で公園管理局側は計2300人余りを採用して公益林と天然林の管理をさせている。うち1300人余りが地元住民だ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News