【10⽉29⽇ Peopleʼs Daily】執刀医は浙江省(Zhejiang)にいる。手術台に横たわる患者がいるのは新疆(Xinjiang Uighur Autonomous Region)だ。医師がロボットアームを操作すると、5000キロ近く離れた新疆の手術室でロボットアームが正確に動く。浙江省内の病院は現在までに新疆を支援する5G超遠隔ロボット手術を50例以上実施した。遠隔医療には、医療サービスの地方格差を低減する大きな意義がある。

 浙江省は2010年、新疆ウイグル自治区の一部地域への支援を開始した。それ以来、通信技術を利用した浙江省内の医師による遠隔問診や医療映像の伝送などが実施されてきた。しかし当初は浙江省内の医師にとっても、新疆の患者に遠隔手術を行うことは、夢物語に思えたという。

 遠隔ロボット手術の難しさはどこにあるのか。新疆への医療支援に参加する浙江大学(Zhejiang University)付属邵逸夫病院のある医師は「主に通信技術です。一般的に、手術中の信号遅延は最大で0.3秒を超えてはなりません。まして、信号の途絶は許されません」と述べた。

 近年では5Gなど通信技術が急速に進歩し、通信インフラは絶えず改善されている。2023年時点で、中国の5G標準必須特許声明件数は世界の42%に達し、5G基地局総数は337万7000か所に達した。演算力の規模は世界第2位だ。この世界最大規模で最先端の5Gネットワークが、時空の制約の突破を可能にしている。

 先ごろ、新疆ウイグル自治区内の砂漠の道路で、男性が自動車事故で重傷を負った。現場近くで勤務していた医師が駆け付けたが、その医師は救急治療の経験が不足していた。医師は、不適切な処置をしてしまうことを恐れた。

 威力を発揮したのは、やはり通信技術だった。負傷者が運び込まれた医務室には、専用の眼鏡が備えられており、医師が着用した眼鏡から信号が5Gネットワークを通じて邵逸夫病院に送信された。そこには経験豊富な救急医療の専門医がおり、患者の状況をリアルタイムで観察して、先方の医師を指導した。同病院の蔡秀軍(Cai Xiujun)院長は、「5GプラスARの遠隔診療システムは質の高い医療を最末端にまで拡大するのです」と説明した。

「インターネット+プラス医療」は、それ以外の地方でも、農村と都市の良質な医療資源の共有を推進している。遠隔医療サービスはすでに中国のすべての県をカバーしており、末端医療機関である衛生院の70%は上級の病院と遠隔医療協力関係を構築した。

 新疆に住む慢性病患者のトゥルフジャンさんは、「街まで出向いての検査でも、今では地元の病院で結果を見られるので、とても便利です」と満足そうに言った。新疆では各地域の慢性病患者についての情報共有や検査データの相互承認、規範化と同質化を実現する統一管理の体系が構築されつつある。

 中国では医療分野だけでなく、通信技術を応用して行政サービスや公共サービスの利便性を向上させ、より多くの人々が情報化による恩恵を享受できるようにする取り組みが進められている。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News