【12⽉14⽇ Peopleʼs Daily】中国は2020年12月17日、嫦娥5号(Chang’e-5)によって月土壌サンプル1731グラムを初めて地球に持ち帰った。中国国家航天局(CNSA)によるサンプル引き渡しの対象になった中国科学院(Chinese Academy of Sciences)傘下の地質・地球物理研究所はサンプル3グラムを受け取った。

 同研究所の呉福元(Wu Fuyuan)所長は研究チームに、「1週間以内に年代を決定し、水含有量、ストロンチウム、ネオジム、水素などの同位体分析を完了し、さらに1週間で論文を完成させよ」と要求した。要求は「いきなり」ではなかった。研究チームは知識と技術を蓄積して十分な準備をしていたからだ。

 チームは「中国式スピード」で作業を完遂した。そして国際的に権威ある科学誌の「ネイチャー」は審査の上で、100日後に関連論文3本を掲載した。チームは、月のマグマ活動が定説より10億年後まで続いたことを明らかにした。

 研究チームのメンバーの一人だった賀懐宇(He Huaiyu)研究員は、「嫦娥5号の着陸地点が慎重に選定されたおかげです」と説明した。全く新しいタイプのサンプルを入手できたので、多くの新しい認識を迅速に得ることができたという。

 国家航天局は3年余りにわたって中国国内の131の研究チームに計85.48グラムの嫦娥5号のサンプルを配布しており、100件以上の論文が発表されて人類の月に対する認識が繰り返し更新された。国外に対する第1期分の配布についても、申請の審査を完了している。そして今年になって打ち上げた嫦娥6号(Chang’e-6)帰還機は、人類として初めて月の裏側の土壌サンプル1953.3グラムを地球に持ち帰った。

 嫦娥6号については国際協力も大きな特色で、国外からの機器が4基搭載された。パキスタンの超小型衛星であるICUBE-Qもその一つだ。パキスタンにとって初の月探査であり、パキスタン側と中国の上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)が共同開発した。中国側責任者を務めた呉樹範(Wu Shufan)教授によると、ICUBE-Qは軌道上で衛星自身がシステムの不具合の予兆を自動検出することができ、さらに探査実施の予定を柔軟に自動調整する。また、特殊マグネシウム合金やハニカム炭素繊維などの先進的素材を採用するなど高度な技術が投入されている。

 ICUBE-Qには軌道上で作業を5時間行う性能が求められていた。しかし実際には55日間も作業を実施し、データを地球に送信し続けることで、パキスタンの月研究に貴重な第一次情報を提供した。呉教授は「期待をはるかに上回る成果でした」と述べた。

 嫦娥7号(Chang’e-7)には国外からの機器6基の搭載が決まった。嫦娥8号(Chang’e-8)では国際社会に向けて200キログラム分の搭載を提供することが決まり、30件余りの申請を受けた。嫦娥は中国のものである一方で全人類に属しており、国際社会での科学技術協力に広い舞台を提供している。中国は世界の深宇宙探査に知恵と実力をもって貢献しつつ、月探査を進めている。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News