【12月17日 CNS】中国の囲碁は、世界で最も歴史が長く、複雑な知的競技の一つであり、人類の最高の知恵を象徴するスポーツとされている。

 中国の棋士、柯潔(Ke Jie)九段がAI囲碁ロボット「アルファ碁(AlphaGo)」と対戦してから7年が経つ中、人工知能(AI)は囲碁に対する人びとの理解と認識を大きく変えた。しかし、AIが囲碁の世界に深く影響を与えたこの7年間で、囲碁への関心が薄れることはなかった。中国では「2005年以降生まれ」の若手棋士たちが次々と登場し、囲碁は東アジアからさらに世界へと広がりつつある。

 では、なぜAI時代においても、人類には囲碁が必要なのだろうか?

 中国囲碁協会名誉会長兼技術委員会主任であり、「棋聖」と称される聶衛平(Nie Weiping)氏は次のように語る。「確かに、過去の囲碁理論のいくつかはAIによって覆されました。しかし、AIは人類が作り出したものであり、最も偉大なのは依然として人間です。そして、囲碁はその奥深さから、盤上の理論が日常生活や学習、仕事においても指針となる役割を果たします」

 唐代の囲碁の名手、王積薪は「囲碁十訣」と呼ばれる心得をまとめた。その中には、「彼強自保」(敵が強いときはまず自分を守る)や、「入界宜緩」(他者の領域に入ったときは軽率な行動を控える)といった教えがある。これらは盤上だけでなく、日常生活や軍事戦略にも通じる普遍的な原理として評価されている。そのため、「囲碁は人生のようだ」とも言われるのだ。

 現在、中国には約6000万人の囲碁人口がいるとされ、段級位証書を持つアマチュア棋士は約1500万人に上る。囲碁には中国文化の多くの内包が込められており、伝統社会において囲碁は単なるスポーツにとどまらず、儒教・仏教・道教や兵法とも結びついた、技術と芸術の完璧な融合とされてきた。

 聶衛平氏は、囲碁をさらに世界に広めるには、囲碁人口を増やすことに加え、欧米や東南アジアの棋士の参加が不可欠だと述べる。現在、オーストリア、イギリス、フランス、オランダ、米国には囲碁協会があるものの、職業棋士は中韓日3カ国に集中しており、大規模な囲碁大会もこれらの国々の間で行われているのが現状だ。

 20世紀には、日本が最初に多数の棋士を欧米に派遣して囲碁を普及させた。米国唯一の九段棋士、マイケル・レドモンド(Michael Redmond)氏も日本棋院で師事を受けている。また、この10年間、中国の浙江省(Zhejiang)の衢州市(Quzhou)は毎年ヨーロッパの若手棋士を無料で招き、中国で訓練するプログラムを実施し、一定の成果を上げている。しかし、囲碁人口や欧米・東南アジアの棋士の実力向上は一朝一夕で成し遂げられるものではなく、自然なプロセスが必要であり、急ぐことはかえって逆効果だと聶氏は指摘する。

 聶衛平氏は、「これまで長い年月を経て、囲碁界での自分の役割は変わってきました。しかし、この世界に貢献したいという思いは、決して変わることはありません」と語る。若い頃は「世界最高の棋士」として数多くのタイトルを獲得することを目指していたが、現在では「より多くのチャンピオンを育てる」ことに力を注ぎたいと考えているという。(c)CNS/JCM/AFPBB News