【12⽉27⽇ Peopleʼs Daily】中国・湖北省(Hubei)孝感市(Xiaogan)にある雲夢県(Yunmeng)は、省内で面積が最小の県だが、県博物館は5000点余りもの文化財を所蔵している。県レベルの博物館としては中国全国でも極めて多い。

 発端は偶然だった。1975年末に県内で水路を掘った際に、戦国末期から秦代までの墓12基が見つかったのだ。うち11号墓からは、1000枚以上の竹簡が発見された。竹簡は、秦が中国を統一した歴史的瞬間に、「喜」という官吏が4万字以上の文字で記したものと分かった。その中には、中国でこれまで発見された中で最も古い法典の「秦律十八種」もあった。

 雲夢県博物館は大量に出土した木漆器も所蔵している。漆器は出土直後から保存作業をせねばならない。脱水、補強、形状の固定、さらに傷んだ部分の修復も必要だ。これらの作業を担当するのは湖北省博物館(Hubei Provincial Museum)の李瀾(Li Lan)研究員だ。作業は非常に複雑で、脱水期間だけで1、2年はかかり、大型漆器ならば5年以上が必要だ。

 かつては雲夢県博物館で保存作業ができず、条件の整った大都市に輸送せざるを得なかった。状態が悪い漆器を長距離輸送すれば、わずかな不注意で損傷させる恐れがあった。しかし、数年前に文化財保護のための「雲夢ワークステーション」が設立されたことで、県の文化財保護力は強化された。李研究員は多くの時間を、地元の文化財修復技術者の育成に使うようになった。

 影絵芝居の公演場所である夢沢影劇場では、正午が近づくと太鼓が鳴らされた。演目は出土した竹簡の中の「秦律十八種・田律」を原作にしたものだ。法律を担当する役人は、わらを焼かないよう老人を説得し、生態環境を破壊した「村のボス」を法の裁きにかける。ユーモラスなせりふは観客を大笑いさせた。出土した竹簡がもたらした文化は2000年以上の時の流れを経て、今も人々の日常と密接な関係がある。

 仕掛け人は、雲夢県政治協商会議の劉俊明(Liu Junming)委員だ。劉委員は影絵芝居を使って文化を伝承したいと考えた。そこで、仲間の方定敏(Fang Dingmin)さんと影絵芝居演者の秦礼剛(Qin Ligang)さんに相談したところ、3人は意気投合して短編劇の「秦律戯中戯」を共同創作した。

 秦さんは国家による無形文化財伝承者であり、影絵芝居の斬新な発展に力を入れてきた。古い台本にこだわらず、ニュースなどで人々が関心を持つことを芝居の筋と融合させることが得意だ。秦さんは、「伝統芸術を保護するとは、忘却から救うことです」と述べた。新しさがあって地元の人が親しみやすい演目であるほど記憶に残りやすい。そして「人々に覚えてもらったものこそ、伝承されるのです」という。

 今日の雲夢県は、歴史の蓄積から文化を抽出して、文化の保護、観光、商業を結合させることを模索している。過去数年間で無形遺産展示館、秦簡記念園を新設し、図書館や文化館を整備した。そのことで、湖北省が雲夢県を「民間文化芸術の郷」に指定した。古い歴史と奥深い文化を持つ雲夢県は、新たな歴史を歩みつつある。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News