【1月24日 Xinhua News】中国で春節(旧正月)の帰省や旅行に伴う特別輸送態勢「春運」(1月14日~2月22日の40日間)が始まり、今年は期間中に延べ90億人が地域をまたぐ移動をすると見込まれている。年に一度の大移動の中、「実家の両親が子どもの生活する場所で年越しする」ことが新たなトレンドとなっている。

 60歳を超える王春喜(おう・しゅんき)さん夫妻は吉林省長春市から江蘇省蘇州市へ寝台列車で21時間近くかけて向かい、娘が働く町で春節を過ごすという。王さんは「春節の逆移動は初めて。混雑も避けられ、観光地を巡ることもできる」と話した。

 通信事業者のデータによると、2024年の春運期間中、60歳以上の人の移動は前年同期と比べて30%近く増加し、より多くの高齢者が子どもの生活する場所に移動して一緒に過ごしたことが明らかとなった。中国の鉄道部門は、今年の春運全体の旅客数は着実に増加し、こうした逆方向の移動はさらに増加するとみている。

 中国で若者が春節に帰省するのは、故郷への愛着だけでなく、多くの高齢者は移動が不便で、経済的にも負担になるためだ。医療体制の改善や都市と農村の格差が縮小するにつれ、3億人の高齢者、特に農村や小規模都市の高齢者の生活水準と消費能力は著しく向上している。

 江蘇省南京市で働くデザイナーの林佳(りん・か)さんは、湖南省の実家から両親と祖母を迎えて春節を過ごす。「大晦日の晩は人気の火鍋店で食事をし、旅行の計画も立てた」と話す。

 多くの都市で春節期間中、家族3世代で楽しめるイベントが開催される。広東省広州市花城広場の春節ランタン祭りは、全国的に有名な新年の風物詩となっている。四川省成都市では、観光スポットの寛窄巷子(かんさくこうし)散策とジャイアントパンダ基地見学を組み合わせた「新春文化ツアー」に多くの家族連れが参加する。南京市は文化観光イベントを500以上企画し、家族で楽しめる計画を進めている。

 旅行サイトによると、今年の春節の主な傾向は家族旅行で、親子連れの割合は49%に増加、予約数は前年同期比75%増となる見込み。

 「逆方向への移動」は春運の混雑緩和にも貢献する。蘇州駅の職員、許亜峰(きょ・あほう)さんは、大都市からの移動が多い春運期間中は下り便は非常に混雑するが、上りの便には余裕があるため、「逆方向の移動」は客観的にみても輸送の負担を軽減し、乗車率を引き上げることで輸送力の均等配分につながり、効率向上を実現すると説明した。

 南京大学社会学院の胡小武(こ・しょうぶ)副教授は、一部の若者は帰省しても数日間滞在して慌ただしく戻っていくが、両親が子どもの生活する都市に赴けば往々にしてより長い時間を一緒に過ごせ、都市の文化や雰囲気を味わうこともできると指摘した。

 江蘇省無錫市で働く「00後」(2000年代生まれ)の張凡(ちょう・はん)さんは「両親が来れば私たちの生活環境を直接感じてもらえ、お互いの理解が深まる」と語った。

 こうした新たな春節の過ごし方のトレンドに合わせ、多くの都市で、より詳しい交通機関の案内、地下鉄駅、鉄道駅でのボランティアによる手荷物搬送サービスや乗車券購入サポート、観光地での入場料の割引など、幅広い層に向けたサービスが提供される。(c)Xinhua News/AFPBB News