【2月20日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領は19日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「選挙を経ていない独裁者」と呼んだ。両者間の亀裂の広がりは、3年前にロシアがウクライナに侵攻したことで始まった紛争を終結させる取り組みにおいて大きな意味を持つ。

トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「選挙を経ていない独裁者ゼレンスキー氏は早く行動した方がいい。さもなくば国が残らないだろう」と投稿した。

ゼレンスキー氏は2019年に就任。任期は5年だが、ロシアの侵攻を受けるウクライナでは戒厳令が発令されたため、大統領選が実施できず大統領職にとどまっている。

トランプ氏はこうした経緯を念頭にゼレンスキー氏を激しく批判。ジョー・バイデン前米大統領に言及し、「選挙の実施を拒否している。ウクライナの世論調査でも支持率は非常に低い。彼が得意なのはバイデンを『フィドルのように』操ることだけだった」と主張。

「一方、われわれはロシアとのウクライナ戦争終結に向けた交渉に成功している。『トランプ』とトランプ政権だけが成し得ることだと誰もが認めている」と続けた。

キーウ国際社会学研究所(KIIS)によると、ゼレンスキー氏の支持率は低下しているが、紛争開始以来50%を下回ったことはない。

トランプ氏によるゼレンスキー批判に欧州はショックを受けた。ドイツのオラフ・ショルツ首相はゼレンスキー氏を独裁者と呼ぶのは「間違っており危険だ」と警告した。

米国内でも第1次トランプ政権で副大統領を務めたマイク・ペンス氏が痛烈な批判を展開した。

ペンス氏はX(旧ツイッター)で、「大統領閣下、この戦争を『始めた』のはウクライナではない。ロシアが挑発を受けていないのに残忍な侵攻を開始し、数十万人の命を奪った」と指摘した。

ゼレンスキー氏自身も、トランプ氏がロシアの「偽情報」に屈したと反発。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に言及し、「プーチンが長年の孤立から抜け出すのを米国が助けたと思っている」と主張。ゼレンスキー氏からトランプ政権に対するこれまでで最も痛烈な批判となった。

ウクライナ国内でも、トランプ氏の発言は信じられないという声が上がった。

首都キーウのいてつく路上でAFPの取材に応じた兵士のイワン・バニアスさんは「ウクライナがこの戦争を始めたと非難するのはある種の不条理だ。ウクライナ人としては理解できない」と述べた。

対照的に、プーチン氏は米国との交渉の進展を称賛。故郷サンクトぺテルブルクの無人機工場を視察した際に記者団に対し、米国との協議について、「相互利益に資するさまざまな分野での作業を再開するための第一歩を踏み出した」と述べた。

プーチン氏は米国の「同盟諸国」について、「今起きていることは自分たちが招いた結果だ」と述べ、トランプ氏の再選に反対してきたことの代償を支払っているとの見解を示唆した。(c)AFP