【3月3日 CNS】かつて一世を風靡(ふうび)したパナソニック(Panasonic)のテレビが、時代の遺物となるかもしれない。

 最近、パナソニックがテレビ事業の売却や縮小を検討しているという報道が話題になった。パナソニックはすぐに「何も決定していない」と否定したが、注目すべきは、近年、パナソニックを含む複数の日系企業がテレビ市場から徐々に撤退していることだ。日立製作所(Hitachi)や三菱電機(Mitsubishi Electric)はテレビ事業から撤退し、東芝(Toshiba)のテレビ事業は中国の海信集団(Hisense Group、ハイセンス)に買収された。ソニー(SONY)やシャープ(Sharp)の市場シェアも低下を続けている。

 日本のテレビ業界が全体的に縮小する一方で、中国のテレビブランドは着実に台頭している。日本の調査会社BCNのデータによれば、2024年に中国のテレビブランドが日本市場で50%以上のシェアを獲得した。

 世界市場でも中国のテレビブランドは急速にシェアを伸ばしている。市場調査機関カウンターポイント(Counterpoint Technology Market Research)のデータによれば、2024年第3四半期、サムスン電子(Samsung Electronics)の市場シェアは15%で、ハイセンスとTCL科技集団(TCL Technology)の12%をわずか3%上回るに過ぎない。LGは10%で続き、小米科技(シャオミ、Xiaomi)は5%だった。これにより、サムスンとLGが長らく維持してきた2強体制が崩れた。

 中国のテレビブランドは、どのようにして日本市場の半分を占め、さらに世界市場に進出したのだろうか。特に、日本の家電市場は競争が激しく、消費者のブランド忠誠度も高いため「攻略が難しい市場」とされていた。
 
 供給面では、高いコストパフォーマンスが突破口となった。中国製品の特徴である「高品質・低価格」を支えるのは、完全な産業チェーン、強力な製造能力、そして規模の経済だ。中国のテレビ企業はこれらの優位性を活かして、技術開発と品質向上を重ね、競合他社と比較しても性能と価格のバランスが取れた製品を市場に提供している。

 日本のメディアによれば、中国ブランドの55インチ液晶テレビは日本で10万円以下で販売されているが、パナソニックの同等製品はその倍近い価格になる。

 需要面では、消費者のニーズの変化が追い風となった。スマートフォンの普及により、テレビに求められる要素が変化した。画質やスクリーンサイズ、AI技術、省エネ性能などが重視されるようになったが、大手企業の中には旧来の技術に固執して機会を逃したり、変化に対応しきれないところもあった。

 一方、中国企業はグローバル市場での経験を活かして市場の変化を敏感に察知し、消費者のニーズに応じた新製品を次々と投入している。すでに中国企業は標準液晶ディスプレイ市場をリードしており、次は韓国や日本企業が強みを持つ高級テレビ市場を狙っている。

 ローカライズ戦略も成功のカギとなっている。同じ製品でも、異なる文化圏ではニーズが異なるため、それに対応することで市場の壁を打ち破っている。多くの中国企業は現地市場向けの研究開発センターを設立し、管理やマーケティングも現地に合わせて最適化している。さらには、現地ブランドとのコラボレーションや買収を通じて市場を開拓している。これにより、短期的な利益を追求するのではなく、ブランド力を高めてユーザーを確保する戦略を取っている。

 実際、テレビだけでなく、近年では冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの中国製家電も海外で人気を集めている。さらに電気自動車、3Dプリンター、産業用ロボットなど、高い技術力を要する新製品も次々と海外市場に進出しており、世界中で「中国ブーム」を巻き起こしている。

 長い間、「メード・イン・チャイナ」は世界で最も認知度の高いタグの一つだったが、「中国ブランド」を誇らしく思う人は多くなかった。しかし、いつの間にか中国ブランドは世界中の人びとの日常生活に浸透している。

 中国ブランドの台頭は、企業戦略の成果であると同時に、国家の産業政策と市場の活力が深く共鳴した結果でもある。これには、成長のエネルギーが蓄積されてきたこと、産業の高度化が進んでいること、そして経済成長を維持するための内在的な要因がある。今後、グローバルな競争がさらに激化する中で、中国企業は活力を保ち、革新を続け、オープンな姿勢を維持することで、世界市場での地位を確立し、着実に前進し続けるだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News