山頂近くで死去した登山家の娘、現場で父の写真回収 アルゼンチン
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【3月6日 AFP】アメリカ大陸で最も高い山の一つトゥプンガト山(約6600メートル)の氷で覆われた山頂近くで40年前に死亡したアルゼンチン人登山家の娘2人が、現場から父のリュックサックを回収した。中にはカメラ用フィルムが入っており、父の最後の体験の一部を垣間見ることができた。
ギジェルモ・ビエイロさんは1985年、トゥプンガト山から下山中に亡くなった。44歳だった。
昨年、登山家のガブリエラ・キャバレロさんが同山の斜面でこのリュックを発見。中身を調べてビエイロさんの娘のグアダルーペさん(40)とアスルさん(44)に連絡した。
今年2月、3人はトゥプンガト山の山頂に近い標高約6100メートル地点からリュックを回収するため、ガイド4人と映画製作者2人を伴い11日間の旅に出発した。
ビエイロさんが亡くなった時、わずか4歳だったアスルさんはAFPに対し、「わが家で『山』は禁句だった。母はリュックの発見に一切関わりたくないと言っている。家族は悲しみと虚無感で崩壊している」と語った。
「私にはすべてが狂っているように見えたし、父が亡くなった山に戻りたくはなかった。でも、月日がたつにつれてだんだん気持ちが楽になり、『なぜ戻っはいけないのか』と考えるようになった」
一行はリュックから、ジャケットと寝袋、水筒、アスピリン、ビタミンCのタブレット、ナイフ一式、カメラ用フィルム2本を発見。アスルさんは「『私はまだここにいる、存在している。あなたは一人じゃない』と心に呼び掛けられたように感じた」という。