【3月14日 CNS】中国の浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)が話題をさらった後、深セン市(Shenzhen)も最近、次々と動きを見せている。

 先週末、深セン市は記者会見を開き、一連の新たな政策を発表した。たとえば、大学卒業生の就職活動者に提供する無料宿泊期間が、これまでの7日から15日に延長された。

「最も優れたイノベーション・起業エコシステムの構築に注力する」との方針は、2025年の深セン市政府活動報告にも盛り込まれている。

 続いて、杭州市の「宇樹科技(Unitree Robotics)」が後方宙返りを披露した直後、深セン市の「众擎机器人科技(Zhongqing Robot Technology)」は前方宙返りというさらに高度な動作を披露し、世界で初めてこれを達成したヒューマノイドロボットとなった。

 深セン市の両会(市の人民代表大会と政治協商会議)期間中には、ロボット「夸父(Kuafu)」が「記者の相棒」として登場し、注目を集めた。

 こうした動きの背景には、深セン市が直面する「イノベーションへの問い」がある。それは、「なぜ『杭州六小龍(杭州の6大スタートアップ企業)』は深セン市では生まれなかったのか?」という問いだ。

 深セン市は、活発なベンチャー投資市場、創造性と技術進歩を促す独特な環境、野心と情熱を持つ起業家たちの存在により、華為技術(ファーウェイ、Huawei)、騰訊(テンセント、Tencent)、比亜迪汽車(BYD)、大疆創新科技(DJI)など、世界的企業を育ててきた。

 ただ、「杭州六小龍」のひとつ、ゲーム開発企業「ゲームサイエンス」は元々深セン市で創業されたが、話題のゲーム「黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)」は杭州で開発された。創業者の馮驥(Feng Ji)氏は、「杭州は深セン市ほどせかせかしておらず、住宅価格も高くないため、落ち着いて開発に取り組めた」と語っている。

 常に危機意識を持つ深セン市にとって、AIやロボット産業の流れを逃すわけにはいかない。

 深セン市にはその力と自信がある。AI関連企業は2600社以上、ユニコーン企業は6社。ロボット関連では上場企業が34社、ユニコーン企業が9社に上り、技術革新の活力はとどまることを知らず、強力な産業集積効果が生まれている。

 さらに、深セン市は製造業でも強い基盤を持ち、2024年には多くの分野で全国トップを獲得した。

 国家レベルの「専精特新(特化・精密・特色・革新)小巨人企業(高度な技術力を持つ特化型中小企業)」および「製造業単一分野チャンピオン企業」の増加数は全国1位。新エネルギー車の生産台数も全国1位。貨物用ドローンの生産規模も全国トップに立っている。

 新興産業の発展を加速するため、深セン市政府は2025年の活動報告に「AI、低空経済、宇宙産業など新たな産業分野への全力投入」と明記し、人型ロボット産業の加速推進も掲げている。

 さらに深セン市は、「起業するなら、時・場所・人すべてが揃っている」と打ち出し、イノベーションチェーン・産業チェーン・資金チェーン・人材チェーンの深い統合を進め、都市全体を「新しい生産力の源」かつ「イノベーションのインキュベーター」と位置づけている。

 各地がイノベーションの高地を目指して競い合う現在、これは健全な競争でもある。深セン市は「より積極的に、より開かれた姿勢で、より効果的に」人材を集め、科学技術イノベーションのエコシステムづくりに本腰を入れている。

 イノベーション都市・深セン市は、次なる成長ステージへ向けて、着実にスピードを上げている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News