【3月16日 CNS】「民間・中小企業への支援を強化」「民間企業と起業家の合法的権益をしっかりと保護する」

 2025年の中国政府活動報告では、「民間経済」「民間企業」「民間資本」が繰り返し言及され、政策レベルでの民間企業への重視が明確に示された。

 2月中旬に民間企業座談会が開かれたのに続き、中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)を含む5部門が先行して「民間企業の高品質な発展を支える金融座談会」を開催し、融資制度の整備や民間企業が抱える「融資難・高コスト」問題の解決に注力する方針を打ち出した。

 さらに、3月5日の政府活動報告では「構造的な金融政策ツールの最適化と革新により、民間企業・中小企業への支援をさらに強化する」との方針が示された。

 改革開放から40年以上、民間企業は中国経済の「成長の原動力」となり、高品質な経済成長を支える基盤でもある。しかし、長年にわたり多くの民間・中小企業は依然として「資金調達が困難で高コスト」という問題に直面している。

「資金は民間企業の経営にとって極めて重要な要素だ」と、招聯金融首席研究員・上海金融発展実験室副主任の董希淼(Dong Ximiao)氏は指摘する。つまり、民間企業支援には金融システムによる支援拡充が不可欠なのだ。

 ここ数年、金融部門の積極的な取り組みにより、民間経済に向かう金融資源は増加している。2024年末時点で中小企業向け融資残高は81.4兆元(約1664兆8498億円)に達した。ただ、新たな課題として「資金を本当に必要とする企業へ、いかに効率的に届けるか」が問われている。

 2月の五部門座談会から3月の全国両会にかけて、多くの民間企業家たちが口にしたのは、「研究開発型企業にはより的確な金融政策が必要」「民間企業の株式資金調達の制限緩和」「農業従事者には元本据置型再融資支援を」など、精緻で柔軟な融資体制への期待であった。

 この課題を解決するには、ただ資金を出すだけでは不十分で、企業の実情に合った「処方箋」が必要だ。そこで、金融管理部門は新たな対応ロードマップを描き始めている。

 第一に、「見えないハードル」の撤廃である。

 五部門座談会では、「金融機関がすべての企業を所有形態に関係なく平等に扱うこと」を明言した。これまで、資産規模が小さく担保能力に乏しい民間企業は、国有企業に比べて信用リスクが高く、銀行の審査で不利になりやすかった。さらに、金融機関にとっては民間企業向けサービスのコストが相対的に高くなる傾向もあった。

 この点に対し、董希淼氏は「金融機関による民間・中小企業向け融資の拡大が、こうした『隠れた壁』の解消につながる」と指摘している。
 第二に、資金調達の「ツールボックス」を拡張すること。

資本市場の活用が、融資問題解決の突破口となる。現在、A株上場企業の約3分の2が民間企業であり、再融資やM&Aにおいても約7割を占めている。しかし、規模に対して資本市場からの資金調達額はまだ伸びしろがある。

 五部門は「株式・債券・融資といった多様な資金調達ルートの整備で、民間企業の成長を支援する」方針を掲げた。

 清華大学(Tsinghua University)経済管理学院副院長の何平(He Ping)教授は「資本市場が政府信用に過度に依存してはいけない。革新的分野への資金投入には、金融システム改革を進め、民間企業により多くの資金調達機会を与えるべきだ」と述べている。

 第三に、金融サービスの「サポートパッケージ」の高度化だ。

 資金調達の問題は、単なる資金不足ではなく、金融サービスの仕組みそのものにもある。

 董希淼氏は「民間企業が抱える融資問題は、金融機関の業務モデルの未整備と関係しており、彼らのニーズに応える金融システムと商品体系の構築がまだ不十分」と指摘している。

 今年の全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議全国委員会会議)で、国家金融監督管理総局の李雲沢(Li Yunze)局長は「一増一減」方針を表明した。「一増」は融資の供給を増やし、できる限り多くの民間企業を対象に、必要な資金を必要なときに供給すること。「一減」は中間コストを減らし、総合的な融資コストを下げることで、企業の実利を高めることだという。

 南開大学(Nankai University)金融発展研究院の田利輝(Tian Lihui)院長は「金融システムを真に『血液を送る』役割から『血をつくる』役割へと進化させるには、制度設計によって金融機関のインセンティブと責任の枠組みを再構築する必要がある」と述べている。

 金融システムが先陣を切って動くことは、単なる資金供給の問題にとどまらず、市場の信頼を回復させる強いメッセージでもある。

 今後、金融体制改革がさらに深化すれば、民間企業の資金調達環境は改善され、中国経済全体の活力と柔軟性も高まっていくだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News