【三里河中国経済観察】人への投資で実現した「GDP1兆元+人口1000万人」合肥の二重の躍進
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【4月3日 CNS】かつて「中国最大の県城(地方都市)」と呼ばれていた安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)が、今では「最も勢いのあるベンチャー投資都市」として注目を集めている。
最近、合肥が再び話題になった。ただし、今度の主役はベンチャー投資ではなく「人口」だ。
2024年、合肥の常住人口が1000万人を突破し、正式に「人口1000万都市クラブ」に仲間入りした。これは長江デルタ地域では、上海市、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)に次ぐ4番目の大都市となる。同年、合肥のGDPも1兆3500億元(約28兆93億円)に達し、全国都市ランキングでは第19位に位置づけられた。
鉄道すら通らなかったと言われた地方都市が、今や「GDP1兆元+人口1000万人」の二つの壁を打ち破った。合肥はいったい何をしたのか。この「風投(ベンチャー投資)」で名を上げた都市の成長の背後には、どのような戦略が隠されているのだろうか。
■経済成長と人材集積の好循環が人口流入を促進
「人はよりよい環境を求めて移動する」とよく言われる。かつて合肥は、資源に乏しく地理的にも不利なため、経済規模も存在感も同規模都市に後れをとっていた。
しかしこの10数年で、合肥の経済は飛躍的に成長した。2012年にはGDP4168億元(約8兆6476億円)だったが、2024年には1兆3500億元へと3倍以上に増えた。この経済成長は、合肥への人口流入にもつながっている。市の統計によると、2024年の転入人口は13.1万人で、常住人口の純増の87.9%を占めている。
経済の成長を背景に、合肥は産業構造を最適化・高度化させ、都市の総合的な競争力を高め、一線都市に匹敵するほどの人材誘致力を備えるようになった。
今年は、人工知能、量子技術、宇宙航空情報などの未来産業を中心に、合肥は全国の有力大学をターゲットに人材スカウトを展開。北京市、上海市、西安市(Xi'an)など14都市、清華大学(Tsinghua University)や復旦大学(Fudan University)など36校を対象に13の専門チームを送り出し、積極的に人材を迎え入れている。
■風投型産業投資による波及効果が続々と現れる
合肥の発展を語る上で欠かせないのが、「投資による産業誘致」だ。2008年、財政難の中で合肥は中国の大手ディスプレイ・パネル・メーカーである「京東方科技集団(BOE)」への大型投資を決断し、国内初の第6世代液晶パネル生産ラインを建設。これが当時は「無謀な賭け」とも批判されたが、結果的に合肥は中国のディスプレイ産業の中心地となった。現在、合肥にはディスプレイ関連企業が180社以上集まり、約4万人が従事する一大産業集積地となっている。
その後も長鑫存儲への投資により半導体分野を開拓、また上海蔚来汽車(NIO)や比亜迪汽車(BYD)など電気自動車メーカーの誘致によって、新エネルギー車産業も急成長している。
合肥の投資戦略は明快だ。戦略的新興産業に狙いを定め、勝負どころでは大胆に資金を投入し、サプライチェーンを形成・集積させてスケールメリットを生む。この「投資で産業を呼び込み、さらに産業で投資を回収する」モデルが、合肥の経済成長と雇用拡大の原動力となっている。
■若者への投資が人口増のカギに
2024年、合肥が新たに呼び込んだ大学生は35万3000人で過去最多となった。2021年以降の累計では110万人を超えており、わずか数年で合肥に1つの県(肥西県)に相当する人口が加わった計算になる。
例えば2023年、安徽省では約48万4600人の大学卒業生がおり、そのうち71%以上が省内に就職。そのうちの38.88%が合肥を選んでいる。
また、近年の合肥は優れた科学技術のイメージによって「理系の街」として注目されており、他都市から合肥に来て働く若者は「科漂(科学で漂流してきた人)」とも呼ばれている。
合肥の「人口1000万人突破」は都市発展の節目であると同時に、さらに上のステージを目指す新たなスタートラインでもある。今後、公共サービスの質をどう向上させていくかも重要な課題だ。
悟りを求めて旅に出ることは、目的地に着くよりも重要な意味を持つ。合肥にとって、単に「GDP1兆元」や「人口1000万人」という数字を達成することよりも、その過程で自己変革を続け、新たな発展の道を切り拓くことが、真の成長といえる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News