【5月15日 AFP】緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」は14日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で「意図的な人道的大惨事」を引き起こし、パレスチナ人の強制移住を援助の条件にしようとしていると非難した。

MSFは声明で、「私たちは、ガザでパレスチナ人の命が根絶される状況が生み出されるのをリアルタイムで目の当たりにしている」「ガザはパレスチナ人にとってこの世の地獄と化している」と述べた。

イスラエルは、1月19日に発効した停戦合意の延長交渉が決裂した後、3月2日からガザ地区を封鎖。人道支援物資搬入を阻止している。

その結果として食糧と医薬品が不足し、ガザの人道危機を深刻化させている。国連は飢饉(ききん)の恐れがあると警告しているが、イスラエルは否定している。

MSFは、現地の医療チームが「過去2週間で栄養失調の患者数が32%増加したことを確認した」と警告。

「燃料備蓄の減少により、淡水化と給水の能力が制限されている」と続けた。

「人口に対する病院・診療所数と病床数が既に極めて不足する中、今も機能している医療施設は、依然として(イスラエルから)攻撃を受け、医薬品やその他の必需品の備蓄が急速に減少している」と説明。

「ガザの医療チームは11週間、物資の補給を受けておらず、滅菌圧迫包帯や滅菌手袋といった必需医療品の深刻な不足に直面している」と補足した。

MSFは、ガザでの援助物資配給を主導する新たな財団を設立するという米国の提案を断固として拒否した。この案はイスラエルが支持しているが、国連や既存の援助機関を脇に追いやり、事実上イスラエルに主導権を委ねるものだ。

MSFは「人道支援を装って物資の配給を統制するという米国とイスラエルの案は、人道・倫理・安全保障・法律面で深刻な懸念を引き起こしている」と主張。

「住民の強制移住と身元調査を援助の条件とすることは、パレスチナ人に対して進行中の民族浄化の新たな手段だ」「援助物資の提供能力をさらに制限し、(援助物資の提供を)イスラエルの軍事占領目的に従属させるいかなる計画も断固として拒否し、非難する」と続けた。

MSFは、「国連、欧州連合(EU)加盟国、そしてイスラエルに影響力を持つすべての人々」に対し、「援助の道具化を阻止するために、政治的・経済的影響力を至急行使する」よう求めた。

「援助を道具として利用しようというイスラエルの計画は、自らが引き起こした人道危機そのものに対する皮肉な対応だ」と主張。

「イスラエルとその同盟国は、自らが望めば、きょうにでも封鎖を解除し、命が懸かっているガザのすべての人々に人道援助物資を届けることができるはずだ」と訴えた。(c)AFP