【5月22日 Peopleʼs Daily】中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)のモリダワ・ダウール族自治旗(Daur Autonomous Banner of Morin Dawa)のダウール族の80歳の女性ハセンさんは、スマートフォンで試合のライブ中継を見る方法を知った。

「2024年第8回 男子ホッケー・アジアチャンピオンズトロフィー」 が内蒙古自治区モリダワ・ダワール族自治旗で開催され、中国で最初のホッケー国家級女性コーチであるハセンさんを興奮させた。

 大会では、下馬評の低かった中国男子ホッケーチームが強豪を破り、準優勝に輝いてアジアチャンピオンシップでの最高成績を更新した。この代表チームには、モリダワ自治旗出身の選手が7名在籍している。

 同自治旗の総人口は30万人余り、この地は「ホッケーの故郷」と称され、伝統スポーツと現代スポーツの融合を体現している場所だ。

 同自治旗に向かってくねくねとした山道を車で進むと、大興安嶺山脈(Daxinganling)の南麓特有のクヌギの木が雪の中をまっすぐに立っている。同自治旗で育った子どもたちは、クヌギの枝をスティック代わりに使い、空き地を走り回りながらホッケーを楽しむ。

 現代のホッケーは1908年に初めてオリンピックの正式種目になった。

 新中国成立後、競技スポーツの空白を埋めるため、当時の国家体育委員会は専門家チームを全国各地に派遣し、ホッケーの普及状況を調査した。専門家チームはモリダワ自治旗を訪れ、ダワール族の伝統的なスポーツ「ボイコ」(ダワール語で「曲がった棒」の意)を発見し、大変驚いた。試合の道具や競技の規則が 現代のホッケーと非常に類似していたからだ。

 その後76年に中国初の男子ホッケーチームが同自治旗で結成され、結成当時ほとんどの選手がダワール族だった。そして80年には、「ダワール族伝統ホッケー競技」の代表的な継承者で国家級無形文化遺産に指定されているハセンさんの提唱で、中国初の女子ホッケーチームが設立され、ハセンさん自身がこのチームの指導を担当した。

「中国ホッケー協会」は89年、この自治旗を「ホッケーの故郷」と認定した。その後24年9月には「国際ホッケー連盟」のタイーブ・イクラム(Tayyab Ikram)会長がこの自治旗に「ホッケーの名城」という看板を授与し、「ホッケーの故郷」記念冊子を贈呈した。

 競技場内で選手たちがそれぞれのポジションに就き、開始のホイッスルが静けさを破る。緑の芝生の上で選手たちが力強くスティックを振り、ボールが来る前に歓声が上がる。

 中国男子ホッケーチームの王彤監督は「モリダワ自治旗には優れたホッケーの草の根の基盤があり、ここではホッケーはマイナースポーツではない」と話す。

 過去50年間、この自治旗の選手は中国ホッケー国家チームの重要な構成員として活躍してきた。中国の女子ホッケーチームがパリ五輪で銀メダル、男子チームがアジア大会で銀メダル、五輪で11位を獲得した成績の背景には、常にこの自治旗の選手の存在があった。

 この自治旗は現在までに、各省のチームの選手とコーチを500人以上育成し、そのうち200人以上の選手と30人以上のコーチが国家トレーニングチームに選出されている。

「24年男子ホッケーアジアチャンピオンズトロフィー」の試合の合間、7人の海外審判員がモリダワ自治旗中等職業技術学校を訪れ、ホッケー専攻の学生の訓練を指導した。

 1回の練習試合を終えたホッケー専攻の2年生・オハンゼ君は汗だくになった。彼は専門家たちから称賛されたことを知り、照れくささと興奮が混じり合った表情で「国際大会が『地元』で開催されたことで、自分の目標がより明確になった」と言った。

 4年間専門訓練を積んだオハンゼ君の夢は、優秀なプロ選手になることで「私たちにはこんなに良い練習場があり、条件は昔よりずっと良くなった。今後もっと努力する」と決意を述べた。

 この学校は15年にホッケー専攻科を設け、現在までプロチームに多数の選手を送り出している。今年、学校は他の高等教育機関と提携し、ホッケー専攻科の特待生を募集する予定だ。特待生はホッケーを続けながら専門教育を受けられ、ホッケー選手の進学ルートが確立された。

 現在、モリダワ自治旗は体育と教育の融合を推進し、後継人材の育成に力を入れている。 旗内の40の小学校と中学校全てにホッケーの授業を導入し、そのうち39校が校内ホッケーチームを結成している。

 旗教育体育局の劉金柱(Liu Jinzhu)局長は「わが旗の濃厚なホッケーの雰囲気を活かし、小学校から大学まで一貫した育成・訓練体系を構築した。優秀な選手はプロチームの選抜を受ける機会が与えられ、ホッケーの健全で秩序ある発展を保障している」と話している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews