【6月3日 AFP】イスラエル軍は2日、占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でのメディアツアーを妨害し、アカデミー賞のドキュメンタリー長編賞を受賞した映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の共同監督の一人が居住している村への記者の立ち入りを禁止した。

『ノー・アザー・ランド』は、イスラエル人とパレスチナ人の活動家兼映像作家が共同監督し、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区マサーフェル・ヤッタで撮影。イスラエル軍が射撃訓練場を作るために住居が取り壊され、強制退去させられる若いパレスチナ人の姿を追っている。

AFPをはじめとする国際メディアの記者は、マサーフェル・ヤッタのトゥワニ村に住むバーセル・アドラー監督と、共同監督を務めたイスラエル人のユヴァル・アブラハーム氏に同村に招かれ、ここ数週間でパレスチナ人の家屋が相次いで取り壊され、暴力事件が起きている事態についての取材を試みた。

しかし、トゥワニ村の入り口で、記者とパレスチナ自治政府の代表団は、イスラエル軍によって通行を阻止された。

イスラエル軍は、一日限りの検問所を設置するための令状を所持していると主張した。

名前を公表するのを拒否したイスラエルの将校の一人はAFPに対し、部隊がトゥワニの入り口に配備されているのは「公共の秩序を維持するため」だと説明。

「入植者、ユダヤ人、アラブ人、記者との間で暴力的な衝突があった。そうした暴力沙汰を防ぐために、われわれは本日の入村を許可することはできない」と述べた。

アブラハーム監督は、この検問・封鎖は「イスラエル当局がマサーフェル・ヤッタでのパレスチナ人への攻撃に関与していることを示す一例」だと指摘。

トゥワニ在住のアドラー監督は、暴力が「ますますひどくなってきている」とし、「入植者による暴力が増加している。イスラエル兵や当局者が私たちパレスチナ人の家や学校、資産を取り壊す事例が異常なほど増えてきている」とAFPに語った。(c)AFP