【6月4日 AFP】世界一の大富豪で米実業家のイーロン・マスク氏が3日、減税などのドナルド・トランプ大統領の看板政策を盛り込んだ法案を嘲笑した。マスク氏は数日前に「政府効率化省(DOGE)」の顧問を退いたばかりで、驚くべき決裂だ。

マスク氏は、抜本的な歳出削減という公約を果たせなかったと批判されていたにもかかわらず、トランプ氏から称賛されていた。

マスク氏はX(旧ツイッター)に、「この巨額で法外な、利権まみれの歳出法案は、ひどく忌まわしいものだ」「この法案に賛成した者たちは恥を知れ。君たちは自分が間違っていたことを分かっているはずだ」と投稿。マスク氏からトランプ氏の政策に対するこれまでで最も痛烈な批判となった。

マスク氏がトランプ氏の「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル」法案についてコメントしたのは今回が初めてではない。この法案は、医療・食糧支援プログラムへの拠出を大幅な削減するにもかかわらず、米国の財政赤字を10年間で3兆ドル(約429兆円)増加させる見込みだ。

だが、マスク氏の以前の批判は今回のものより控えめで、この法案は自身の歳出削減努力を損なうと述べるにとどめていた。

マスク氏は3日、議会で審議中のこの法案は「国民に壊滅的で持続不可能な債務を負わせる」ことになると述べた。

この投稿は、トランプ政権と、2024年大統領選でトランプ陣営に3億ドル(約429億円)を献金したマスク氏の緊張が高まっていることを浮き彫りにした。

米メディアによると、マスク氏はホワイトハウスが自身の利益となる行動を取らなかったことで幻滅しているという。

法案は電気自動車(EV)の税額控除を削減するもので、マスク氏率いるテスラにとっては痛手となる。

米ニュースサイト・アクシオスは、マスク氏が130日以内と法律で定められている「特別政府職員」の任期を延長しようとしたが、阻止されたと報じている。

アクシオスによると、マスク氏はまた、自社の衛星インターネットサービス「スターリンク」を航空管制に使用させることにも失敗。トランプ氏がマスク氏の盟友である実業家ジャレッド・アイザックマン氏の米航空宇宙局(NASA)長官指名を取り下げたことにも憤慨している。

普段は好戦的なトランプ氏だが、自身の最大の支持者であるイーロン・マスク氏が、2024年大統領選で重要な支持基盤となった、若くハイテクに精通し、これまで選挙に無関心だった有権者に絶大な影響力を持っていることを理解しているため、今回は攻撃を控えている。

ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は記者会見でマスク氏のポストについて、「トランプ大統領は既にイーロン・マスク氏がこの法案についてどのような立場を取っているかを知っている。大統領の意見は変わらない」と述べた。(c)AFP