【7月8日 AFP】前年11月に自宅軟禁を解除されてから初めてヤンゴン(Yangon)を離れ、地方を訪問したミャンマーの民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)さん(66)は、行く先々で歓迎する人びとの輪に囲まれた。

 スー・チーさんは英国籍の次男キム・アリス(Kim Aris)氏とともに、中部の古都バガン(Bagan)や近郊の村々を4日間かけて訪問。観光地として人気の高いバガンでは、寺院や市場、みやげ物屋などを訪れ、集まった人びとにサインをしたり、共に写真に収まったりした。

 穏やかながら不屈の意志を持ったスー・チーさんが訪れているとの噂はたちまち付近に広まり、一目見ようと多くの人びとが続々と詰めかけた。感極まって泣き出す人や、「母なるスー様が健康であられますように」と祈り叫ぶ人々の姿も見られた。

 アリス氏は、AFP記者に対し「休暇といっても、ゆっくりはできなかった。どこに行っても群衆がいっぱいで、逃れられなかったからね」と話した。
 
■政権の妨害はなし、でも今後は?

 旅行中のスー・チーさんには私服警官の監視が付いていたが、妨害などは一切なく、穏やかな旅路となった。これは、スー・チーさんが演説や政治的活動とみなされかねない行動を徹底的に避けたためだ。旅行最終日となった8日も、多くの報道陣がスー・チーさんの一挙一動に注目していたが、バガンの空港からヤンゴンに戻る飛行機に搭乗するまで、スー・チーさんからのコメントはなかった。

 軍を後ろ盾に持つミャンマー新政府はスー・チーさんの政治活動を厳しく禁じており、ミャンマー情勢の専門家らは、もしスー・チーさんが今後、政治遊説を行うならば、政府との対立を招く恐れが高いと指摘している。

 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のマウン・ザルニ(Maung Zarni)氏は「今回、政権側がスー・チーさんに甘い顔をしたからといって、誰もだまされはしない。彼女が政治支持基盤の再構築につながる旅をしても、政権がそのまま何もせず見逃すなどということはありえない」と語った。

 元駐ミャンマー大使でオーストラリア国立大学(Australian National University)の客員研究員のトレバー・ウィルソン(Trevor Wilson)氏も、公衆を前にした演説など明白な政治活動は「許容範囲外」だとのメッセージを、新政権ははっきりとスー・チーさんに送っていると述べた。

 その一方でウィルソン氏は、スー・チーさんを支持する国民民主連盟(National League for DemocracyNLD)について、「存在意義を示すため、多少なら挑発的なリスクを冒す価値はあると考えているかもしれない」とも指摘。こうした情勢が「平和的な結末を迎えるとは考えがたく、ある種の混乱につながるだろう。小規模な暴動が起きるかもしれない」との見方を示している。(c)AFP/Hla Hla Htay

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